アイデンティティ(ID)管理サービスを提供する米Oktaの日本法人Okta Japanは5月24日、米OktaのCEO兼共同創業者であるトッド・マッキノン氏の初来日に伴い、事業記者説明会を開催した。
マッキノン氏は冒頭、「クラウド、DX(デジタルトランスフォーメーション)、セキュリティ。世界中で加速的に成長しているテクノロジーの中心には必ずID管理が存在する。IDは地球上のすべての人にとって非常に重要な存在だ」と強調した。
米IDCの調査によると、他の利用者と共同で利用するクラウドサービス「パブリッククラウド」への支出は2026年までに2倍以上に増加し、IT全体の支出に占める割合は23%に上るという。また企業のDXに関しては、2025年までにデジタル変革を行わなかった場合、約12兆円の経済的なリスクが発生する「2025年の壁」があると経済産業省は報告している。加えて、急増するサイバー攻撃に備え、セキュリティに対する企業の意識も向上しており、「信用せず常に検証する」という考えをもとにした「ゼロトラストセキュリティ」が注目されている。
「ゼロトラストセキュリティを実現したい場合、リモートから参加する従業員や、ビジネスパートナー、サプライチェーンのパートナーなど、ITリソースにアクセスをしようとしているあらゆるIDを管理する必要がある。ゼロトラスト戦略の中でもIDは、特に中心的な存在になる」と、マッキノン氏は補足した。
同社が提供する「Okta(オクタ)」は、企業の業務活動で使われるさまざまなクラウドサービスにログインするためのIDやパスワードといった認証情報を統合的に管理できるサービスだ。基本的な機能であるシングルサインオン(SSO)は、ユーザーが認証を一度受けるだけで、以降はログインすることなく、さまざまなクラウドサービスを利用できる。また、状況に応じて複数の要素で認証を行う多要素認証(MFA)にも対応している。
日本国内事業に目を向けると、Okta Japanを2020年2月に設立してから、顧客数は約6倍となった。消費者向けサービスの認証基盤「Okta Customer Identity Cloud」における認証数の年間成長率は100%以上で、企業システムのIDやパスワードを一元管理するサービス「Okta Workforce Identity Cloud」は、2023年3月時点での月間認証数は1億6000万回を超えている。
そして同社は、2022年2月に日本国内でデータを保管するサービス「Okta Infrastructure」の稼働を開始した。同サービスは東京と大阪に位置する地理的に離れた2つのAWSリージョンにまたがって構築されており、ユーザーはサービスやデータにより地理的に近い場所でIdentity Cloudを利用できるようになった。
また5月24日には、SmartHRが運営するクラウド人事労務ソフト「SmartHR(スマートエイチアール)」が、ノーコードでID管理のビジネスプロセスの自動化を行う「Okta Workflows」のコネクターに登録された。
SmartHRは、Oktaが展開する7500以上の事前連携アプリテンプレート群「Okta Integration Network」と連携しており、SmartHRのユーザーは、従業員が所属する部署や役職などの人事情報に基づいてアプリケーションの割当・解除の自動化を実現してきた。
今回、「SmartHR」にOkta Workflowsのコネクター連携が加わることで、より細かいレベルでの人事情報を連携できるようになった。例えば、ユーザーの在籍状況や契約種別、事業所などの人事情報を新たに取得できるようになり、人事情報に基づくアカウント管理の自動化が可能になった。
Okta Japanは今後、自社サービスの提供拡大に向けてパートナーシップをさらに拡張していく。パートナー企業数は2023年4月時点で64社と、直近の1年間で約1.5倍に増加した。パートナーの種類も拡大しており、ディストリビューターやリセラーだけでなく、システムインテグレーター(SIer)、ITコンサルファーム、テクノロジーパートナーと多岐にわたる。
「Oktaが日本で成長できた理由は、ビジネスのすべての領域においてID管理が極めて重要であるからだ。CEOは成長や収益性というものを重要視し、CFOはパフォーマンスの高いITを求めている。IDはあらゆるリーダーに関わるものだ。日本市場においても、IDのトレンドはますます重要になってくるだろう」(マッキノン氏)