岡山大学とノートルダム清心女子大学の両者は5月24日、大学生を対象としたアンケートや筋電計を用いた調査の結果、睡眠中に歯ぎしりをする人は食物繊維の摂取量が少ない傾向にあることを明らかにしたと共同で発表した。
同成果は、岡山大学術研究院 医歯薬学域の外山直樹助教、同・江國大輔准教授、同・森田学教授(研究当時)、ノートルダム清心女子大 食品栄養学科の長濱統彦教授、同・小見山百絵准教授、同・山下美保准教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、臨床医学を扱うオープンアクセスジャーナル「Journal of Clinical Medicine」に掲載された。
睡眠中の歯ぎしりは、歯が欠ける、歯周病が進みやすくなる、顎が痛くなるなど、口の中や周辺に大きな悪影響を及ぼす可能性がある。しかし現在のところ、その一般的な対処法は、マウスピースを用いて歯を保護するといった、歯ぎしりによる被害を緩和する対症療法しかない状況であり、歯ぎしり自体を減らす方法が求められていた。
そうした中、睡眠中の歯ぎしりと睡眠の質との関連を解明したのが研究チームだ。歯ぎしりは、睡眠段階N1(浅いノンレム睡眠)に起こりやすいことがわかってきている。つまり、睡眠の質が低いと歯ぎしりが起こりやすいことが示されているのだ。そこで今回の研究では、コーヒーなどに含まれ覚醒作用のあるカフェインなど、睡眠に影響を及ぼすものとして栄養に着目することにしたとする。
まず、岡山大とノートルダム清心女子大食品栄養学科の学生を対象に、口腔内診査と自己記入式質問票調査を行い、睡眠中の歯ぎしりの有無が調べられた。歯ぎしりの有無は、筋電計を用いて診断が行われた。また、過去1か月における35種類の栄養摂取量を調査・推定し、睡眠中の歯ぎしりをしている学生としていない学生で、栄養摂取量の比較がなされた。そして、すでに報告されている睡眠中の歯ぎしりのリスク因子を調整して分析を行った結果、食物繊維摂取量が少ないほど、睡眠中の歯ぎしりを起こしやすい傾向があることが判明したという。
さらに、食物繊維摂取量の上位25%および下位25%の学生を抽出し、睡眠中の歯ぎしりのある学生とない学生の食物繊維摂取量の比較を行ったところ、睡眠中の歯ぎしりをする学生はしない学生よりも食物繊維摂取量が有意に少ないことが確かめられたとする。
研究チームは今回の研究結果について、睡眠中の歯ぎしりの新たな対処法の提案になる可能性があるとしている。
また一方で、若年者の食物繊維の摂取不足・減少傾向が懸念されている。18歳~64歳の食物繊維摂取目標量は、男性が21g以上、女性が18g以上に設定されているが、2019年度の国民健康・栄養調査によれば、20歳~29歳の平均食物繊維摂取量は男性17.5g、女性14.6gと報告されている。研究チームによると、今回の研究に参加した大学生は食物繊維摂取量が少ない集団ではあるが、睡眠中の歯ぎしりと食物繊維摂取量との関連が確認されたことで、全身の健康だけでなく、睡眠中の歯ぎしりの改善という側面からも食物繊維摂取の重要性がクローズアップされたとした。