ヴイエムウェアは昨秋、出産や育児などで離職した女性の再就職支援プログラム「VMware Sakura」(以下、SAKURA)を開始した。同プログラムは、再就職を目指す女性に向けて、ITスキルに関するオンライントレーニングを提供している。同社はなぜ同プログラムを無償で行うのか。
入社3年目ながら同プログラムを統括している、VMware SAKURA - コミュニティプログラム プログラムマネージャの筒井穂乃花氏に話を聞いた。同氏は入社後、ビジネス戦略本部に配属されたが、社会貢献を仕事として取り組みたいと思っていたときに、「SAKURA」が立ち上がり、そのマネージャーに就任した。
ヒントはインドの女性支援プロジェクト「Taara」
「SAKURA」は、同社がインドで行っている女性支援のプロジェクト「Taara」にヒントを得て立ち上がったものだ。ソリューションビジネスグループ統括 ネットワーク&セキュリティ事業部長の小林泰子氏は、「Taara」について次のように説明する。
「ご存じのように、インドは人口が多く、子供もたくさん生まれます。しかし、出産が続くと女性の再就職は難しいです。そうした状況を踏まえ、働きたくても働けない女性の就労を支援することにしました」
「Taara」は元々IT業界で働いていた人を対象としており、基本的にVMwareの認定資格の取得を支援している。登録者は2万5000人に達しており、うち再就職を果たした人は5100人と、高い実績を上げている。
「Taaraの成功を受けて、日本でも何かできないかという話になりました。少子化、就労と育児の両立の難しさといった日本の環境を踏まえ、日本版TaaraとなるSAKURAができました」と小林氏。
そこで、SAKURAの専任者として、白羽の矢が立ったのが筒井氏というわけだ。
IT未経験者からVMware経験者まで幅広く支援
ここで、簡単に「SAKURA」の内容をまとめておこう。「SAKURA」は、「18歳以上の日本在住の女性で、日本国籍・永住資格・在留資格のいずれか1つ保有し、社会人経験があって現時点で3カ月間以上正規雇用されていない」人であれば、誰でも応募できる。
ラーニングパスは習得内容が異なる3種類用意されている。「デジタルスキルパス」は、デジタルスキル、PCスキル、業務アプリケーションスキル (Microsoft Excelなど)、ビジネススキル、ソフトスキルなどを学べる。
「ハイブリッドパス」は、IT基礎トレーニング、ヴイエムウェアの入門レベルの資格取得の機会を提供する。受講後、テストに合格したら、「VMware Sakura バッジ レベル1」と「VMware Certified Technical Associate – Data Center Virtualization(VCTA-DCV)」の受験資格が授与される。
「テクニカルパス」は、エンジニア経験を有する人を対象に、ヴイエムウェア認定プロフェッショナルになるための資格取得の機会を提供する。受講後、テストに合格したら、「VMware Sakura バッジ(レベル1~3)」のほか、「VMware Certified Technical Associate(VCTA)」と「VMware Certified Professional (VCP)」の受験資格が授与される。
これらのトレーニングはすべて無償で受講できる。調べてもらったらわかるが、VCPを学ぶためのトレーニングを受講しようと思ったら、数十万円かかる。これを「VMware SAKURA」では無償で提供してしまうのだ。
個別面談でモチベーションの維持を後押し
筒井氏は、「Taara」と差別化のポイントとして、3つのパスがあることを挙げる。「日本はVMwareのテクノロジーの素地がある人が少ないです。そこで、基本的なITスキルを習得することで、就労の機会を増やすほうがいいのではないかということになり、デジタルスキルパスという新しいパスができました」(同氏)
筒井氏は、「コロナ禍で、飲食業やサービス業に従事していた人が失業した人が多い一方で、事務職にキャリアチェンジしたいけど難しいと聞いています。SAKURAでは、今までPCを使って仕事をしたことがなかった人でもキャリアチェンジできるよう、お手伝いしたいと考えています」と話す。
働きたいけれど働けない、そんな育児中の女性が少しでも学習できるよう、SAKURAのプログラムはすべてオンラインで受講できる。「いつでもどこででも、自分の好きな時間に好きな場所で勉強してもらえたら」という、筒井氏の想いが込められている。
昨年10月からプログラムを開始したが、既に80名の受講生がいるそうだ。オンラインで受講できることから、全国から受講生が集まっており、半分は関東以外に在住とのこと。
ただし、オンライン教育ならではの課題として、「リアルタイムで質問すること」「モチベーションを保つこと」が難しいといったことがある。筒井氏は「モチベーション維持が課題と思っていので、今月から個別面談を開始しました。SAKURAのことに限らず、何でも気軽にお話する時間と思っていただけたら」と話す。