古河電気工業(古河電工)は、2023年4月19日から21日まで東京ビッグサイトで開催された医療機器製造・設計向けの展示会「Medtec Japan 2023」で、同社の光技術を活用した医療機器向けレーザ装置や光ファイバプローブなどを展示していた。また、医療機器メーカーとの共創が進行中の、体外給電を利用した体内医療機器位置検知ソリューション「Tellumino(テルミノ)」のデモンストレーションも行っていた。
光技術のノウハウを活用し“光治療”に貢献へ
主要事業の1つとして光ファイバや産業用レーザを提供する古河電工は、その分野で培った技術を医療領域に展開するため、医療機器メーカーとの共創などを進めている。
今回の展示では、同社の強みを活用した開発品として、カテーテルや内視鏡に挿入可能な光ファイバプローブの光源技術、そして不整脈に対する心臓のアブレーション治療(経皮的心筋焼灼術)に利用されるレーザ技術を紹介した。
光免疫治療などでの利用が期待される光ファイバプローブ
古河電工の担当者は、前者のプローブ光源技術における特徴について、光の照射範囲を選択的に限定できる点だとする。プローブ先端の光源部分に加工を施すことで、プローブの先を円環状に照らすものや、壁面の一部分を照らす側射プローブなど、ニーズに応じた光源が提供できるという。
このプローブは、がんの光免疫療法などに活用が期待されるという。同療法は、光に反応する薬剤を投与し、体内の患部組織にレーザ光を当てることで治療する方法だ。従来の光源では、光源の周囲を全体的に照らしていたため患部以外にも薬剤の影響が出ることが懸念されていたが、選択的にレーザを照射できる光源を用いることで、患部以外への影響を最小限に抑えることができるとのことだ。
治療に合わせた光を出力する光源技術
また、光源だけでなく光そのものに関する知見も保有する同社は、光で患部を焼いて治療するアブレーション治療に有効なレーザ装置も開発している。
同装置は、複数色の可視光や近赤外レーザといったさまざまな波長のレーザを作製できる点が強みとのこと。これにより、波長によって光が到達する深度が異なる特性を利用して、さまざまな治療へとレーザを利用可能だとする。
加えて、出力の面でも連続波からフェムト秒まで制御することが可能だといい、これについては情報通信の分野で培われたレーザのノウハウが多く活用されているという。
体内埋め込み型医療機器検知ソリューションの改良が進行中
古河電工ブースではそのほかに、体内に埋め込んだ医療機器の位置検知ソリューションであるTelluminoを展示している。医療機器メーカーとの共創によって開発が進められている同製品は、体内への薬剤投与のために使用されるCVポートなどといった、皮膚の下に埋め込む必要がある医療機器について、コイルをかざして体外から給電することで発光させ、その位置を可視化するものだ。
従来の医療現場では、体内機器の検知が目視や触診によって行われていたといい、文字通り手探りの状態で針を刺しこんでいたため、作業者に必要とされる技術や心理的負担の面で、課題があったという。Telluminoは、複数の発光部分によって針の差し込み範囲が可視化されるため、ミスの発生確率を低下させるとしている。
同製品は、前回開催の「Medtec Japan 2022」でも展示されていたが、その際は平面的な円形だったコイルの形が、今回の展示では薄い円筒状になっていた。これについては現在さまざまな検討を行っており、最適解の発見に向けて動いていくとのことだ。
古河電工の担当者は、「私たちは医療機器メーカーではなく、自社で機器を開発することはないが、保有する技術を活かした部品の提供や医療機器メーカーと共創を通じて、医療の領域にも貢献していきたい」と語っていた。