Qlikは4月18日、米ラスベガスで年次カンファレンス「QlikWorld 2023」を開幕した。初日の基調講演では同社のCEOを務めるMike Capone氏が登場し、Qlikが考えるデータ活用のポイントなどを説明した。以下、基調講演の模様をお届けしよう。
Qlikの最大の強みは独自技術
QlikWorldは、実に4年ぶりの物理開催となった。それだけでなく、今年はQlikがスウェーデンに設立されて(その後、米国に移転)30周年、Capone氏はCEO就任5周年目という、記念の年となった。
BIは新しい分野ではなく、30年の間に消えた企業、買収された企業ばかりと、厳しい局面を乗り越えてきた。そうした中、「Qlikは変化に強く、革新を続ける。われわれの社員は常に、データとアナリティクスを通じて世界をよくすることを考えてきた」と、Capone氏は同社のこれまでの道筋を語る。
Qlikの最大の差別化のポイントは、30年前に開発した連想エンジン。インメモリとカラム指向により、分散されたデータの重複排除・圧縮、統合、高速な展開などを可能にする独自技術だ。そして、BIの「QlikSense」を使って、複雑な問題を解決しているとCapone氏。
同時に、その間機能を追加してきた。Capone氏が取り上げたのは「Qlik AutoML」だ。アナリティクスチームは、コードを書くことなく機械学習モデルを自動生成できる。「Qlik Cloudの顧客の3社に2社が機械学習やAI機能を活用している」という。
Talend買収でエンド・ツー・エンドのデータプラットフォームを完成
Qlikは複数の買収も重ねてきたが、最新かつ大型の買収となるのがTalendだ。2021年に買収の意向を発表、現在規制当局の承認待ちで、今四半期中に完了を見込むとの見通しを示した。
Talendが持つデータ変換、データ品質などの機能により、「エンド・ツー・エンドのデータプラットフォームを実現する」とCapone氏。「生データからデータの抽出、統合、変換、リネージ、そしてモダンなデータレイクの管理、分析、そしてアクションをとるところまで、企業がデータ活用で抱える課題を一社で解決する」
また、Gartnerのマジッククアドラントでは、13年連続でリーダーとなる「アナリティクス」に加え、「データインテグレーションツール」「データクオリティソリューション」と合計3部門で、同社はリーダーのポジションを獲得しているという。
なお、TalendはCapone氏がQlikのCEOに就任して以来、買収戦略の中で上位に浮上していた企業だったことも明かした。
不確実性の時代、データとアナリティクスで成功するポイント
今年のQlikWorldのテーマは、「不確実な時代にあって、どう確実性を得るか」だ。
2021年3月に起きたスエズ運河閉鎖の事故では、金額にして1日100億ドルと言われる世界の貿易が滞った。誰にも予期できなかったことであり、「モデルもスプレッドシートもない。予期できない問題に対応しなければならなかった」(Capone氏)
そのような不確実な時代をナビゲートする鍵を握るのは、データとアナリティクスだ。それも、「レガシーなデータウェアハウスを使う静的なデータモデルではなく、モダンでリアルタイムのストリーミングデータとモダンなクラウドデータレイクプラットフォームを活用し、リアルタイムで分析する」必要があるという。
「キュレーションされたカタログ、自然言語処理(NLP)や機械学習、AIを使って洞察を得て、すぐにアクションをとり、成果を得る」とCapone氏。
そこでのポイントは、「データファースト」「すべてとコネクト」「ビジネスが利用できるデータ」「信頼性」「予見」だ。もちろん、Qlikにはそれを実現する技術がそろっている。
例えば、「ビジネスが利用できるデータ」では、データがビジネスユーザーの手に渡る前に、コンシュームできるフォーマットがあり、プロセスに組み込まれる必要があるという。「毎日の業務で使用するデバイスにおけるワークフローで、データを使えければならない」とCapone氏。
また、「信頼性」に関しては、「ユーザーはデータが正しくないと思うと使ってくれない。リネージ、品質などが需要だ」と、Capone氏は指摘する。これらは、Talendが加わることでさらに強化されるという。
そして、不確実性を乗り切るために最も重要な要素が「予見」だ。「レポートをPDFファイルにして配布するだけでは、企業の成功には貢献しない」とCapone氏。先述の「Qlik AutoML」を紹介し、「せっかく準備したデータを、データサイエンス目的に取り出すという無駄なことをしなくていい」と述べた。
Qlikでデータドリブン・ビジネス進めるFord
基調講演では、Fordのグローバルマーケティング&セールスアナリティクス担当ディレクター、Caroline Buckley氏が登場し、同社が進めている取り組みを紹介した。
Fordは、製品(自動車)から経営まで、幅広くQlikを活用している。コネクテッドカーでは、センサーを活用してオイル交換の時期を顧客に知らせており、また、EVでは運転パターンや電力会社の情報を見ながら最適な充電時間をレコメンデ―ションしているという。
全社員のデータ活用としては、Google Cloud Platform上に“Enterprise Data Factory”を構築しているところだ。高品質なデータ、データカタログなどを用意し、従業員が容易にデータを活用できるようにする。
Buckley氏によると、「Qlik Replicate」を使って毎日650のデータソースから収集し、「QlikSense」を使ってデータをビジュアル化するユーザーは2万5000人、4000ものダッシュボードが作成されているという。そのうち、データアナリティクスなどの専門家は10%を占めるに過ぎないとのことだ。
「ビジネスのすべての面でデータの民主化を進め、意思決定が必要なところですぐに活用できるようにしている」とBuckley氏は述べた。
加えて、コマンドセンターとして、データ活用の状況を俯瞰する仕組みも用意している。これは、誰がどのようなデータを使っているのかなどがわかるもので、データの利用が進んでいるところに、追加のリソースをタイムリーに追加投入しているという。
「製造の状況は? 前日の売上は? ディーラーの在庫状況は?といった情報をすぐに得て、アクションに移すデータドリブンな組織に変革しつつある」とBuckley氏は胸を張った。
基調講演の最後には、Qlikを使ってビジネス変革を遂げた企業に送るアワード「Global Transformation Awards」が発表され、日本から本田技研工業が受賞した。日本企業が同アワードを受賞するのは初となる。