日本サニパックは、1970年の創業以来、開発から製造までを自社で行っているポリ袋・ごみ袋の総合メーカーだ。同社は、清潔で快適な生活をサポートする「ソーシャルインフラ」を担う企業として進化を続けるために、50周年を迎えた2020年に、DX(デジタルトランスフォーメーション)による次世代型ビジネスモデルへの変革を打ち出した。
同社はマーケティンググループを新設、同グループでデータを活用して「次の50年」につなげる施策を行っているマーケティング開発部 部長代行の津川陽平氏に話を聞いた。
50周年を機に「データドリブン」な企業へ
日本サニパックは伊藤忠商事のグループ会社として、高品質なポリ袋・ごみ袋を自社工場で製造する数少ないメーカーだ。同社は創業50周年を迎えた2020年をDX元年と位置付け、100年企業に向けた第一歩として、今後50年先を見据えてDXによる次世代型ビジネスモデルへの変革を打ち出し、その第1フェーズとして全社レベルでのデータ活用を目指しているという。
また、同社のビジネスは「ごみ袋」というメーカーで商品を選択することが少ないジャンルであることから、一般消費者への製品の認知度を上げるため、経営理念やロゴの刷新を行い、また社長直下にマーケティング部門を新設し、Webサイトのリニューアルを行うなど次々に変革を進めた。
その「社長直下に新設されたマーケティング部門」でデジタルマーケティングを一任されたのが、前職で家電ECサイトのマーケティングを担当していた津川氏だった。
「今ではマーケティング部の組織も大きくなりましたが、立ち上げ当初は私一人でデジタルマーケティングの実務を担当していました。また、それまで『マーケティング部』という組織自体がなかったため、社内の環境が整っておらず、何かを報告したい時にもどうしたら良いか困ってしまうほどでした。また、ゼロからマーケティングデータを収集する必要もあったため、消費者の動向をデータドリブンで可視化・分析し、マーケティング活動の質を上げてくれるツールを探していました」(津川氏)
そこで白羽の矢が立ったのが、社内のデータやシステム、人々をつなげ、データドリブンな経営を実現するクラウド型データ活用プラットフォームの「Domo」だった。
上述したように、日本サニパックがマーケティングに力を入れるのは初めての試みであり、社内に専門的な人材も少なく社員たちが使いこなせるか不安だった。そのため、専門知識がなくても、データを可視化できるツールを探していたという。
「マーケティング部は社長直下の部署だったのですが、Domoは社長が目指している『出社してすぐに最新のデータを確認できる』という環境作りに最適なツールだったため、承認はすぐに得ることができました。コロナ禍になって情報共有が難しい時期もあったので、朝一番にすることは『データを見ること』になってほしい、と私も思っています」(津川氏)
失敗をバネに、「データ活用」の定着が成功した施策とは
社長からの太鼓判もあり、2020年3月にDomoの導入をスタートした日本サニパックだったが、その運用は一筋縄ではいかなかったようだ。
「導入してすぐに全社展開を目指して、本部長や部長といった役職者が売上情報などを見られるようにアカウントを発行したのですが、この施策はうまくいきませんでした。この形態で1年間ほど運用しましたが、期待していた効果はほとんど出ませんでした」(津川氏)
そこで、津川氏は次の策として、「下流から推進する」ことにしたのだという。
「役職者はExcelファイルでデータが流れてくることに慣れてしまっているので、他のツールへの移行が難しいのではないかと考えました。そこで、一般社員に向けて『ExcelでやっていることをDomoでできますよ』ということを伝える説明会を開催しました」(津川氏)
また津川氏は社内格差をなくすため、Domo上に、事業の進捗状況や各部署のKPI、売り上げ状況といったデータを一目で分かるダッシュボードを作成し、公開している。これによって、誰でも社内の状況をスピーディーに把握することが可能になっているという。
こうした津川氏の地道な社内での取り組みが功を奏し、現在では徐々にデータを見る習慣が身についている社員も増えてきたという。
「私一人で始まったデジタルマーケティングの担当者も人数が増え、今では5名ほどが在籍しています。また全社の手本になるように、まずマーケティング部門で目標に対する進捗についてダッシュボードを見て把握し、改善につなげることが定着化しています。リニューアル前と比べて、Webサイトのアクセス数は18倍になるなど大きな効果を得られています」(津川氏)
最後に、津川氏に今後の展望を聞いた。
「今年度は新たに『工場の情報をDomoにつなげる』ことを最大の目標に設定したいと考えています。弊社はインドネシアに工場があるのですが、生産状況や工場で起きたトラブルなどのリアルタイムでの把握が難しいことが課題となっていました。そのため、データで工場の様子を管理できるようになったら、すぐに現地と最新情報を共有でき、次のアクションにつなげることができるので、この課題をクリアしたいと思っています。また、『物流の状況の把握』にも注力したいと思っています。データを用いれば、過去の受発注の記録から今後の発注の予測も立てられるので、そのような施策も考えていきたいと思っています」(津川氏)