あらゆる部門で進むデジタル化、そしてその先にあるDX。経理部門ももちろん例外ではない。2月16日に開催された「TECH+セミナー 経理業務変革 Day 2023 Feb. 税制改正への対応と業務改革」では、アカウンティング アドバイザリー マネージングディレクター/公認会計士で、日本CFO協会 主任研究委員の櫻田修一氏が登壇。「電帳法対応から始める経理DX~業務自動化とビジネスパートナーへのシフト」と題して、日本CFO協会のアンケート調査を織り交ぜながら、経理DXの現状や現場が感じている課題感、これからの経理に求められるものなどについて話した。
7割が電帳法対応でクラウド導入を検討、一方で請求書電子化には保守的な意見も
櫻田氏はまず、電帳法(電子帳簿保存法)への対応状況について、自身が主任研究委員を務める日本CFO協会の会員の回答を紹介した。
インボイス制度への対応についての回答では、「自社内の仕組みで対応」が53%、「クラウドサービスを導入」が30%だという。電帳法の改正を受け、クラウドサービスの導入を検討した企業は66%。電帳法対応は、67%が「大変だと思う」と回答し、「少し大変だと思う」と合わせると82%が「大変」と感じていることが分かっている。
請求書電子化については、「請求書電子化の割合を増やしたい」は約7割、「どちらとも言えない」「増やしたくない」は約3割という結果だった。増やしたくない理由としては、「業務フロー変更が難しい」「電子保管に対応するサービスを未導入」「全て紙で一元管理したい」などが上位に並んだ。
このような結果を示しながら、櫻田氏は「生産性を上げなければならないときに、このような意見が出ていることは残念だ」と見解を述べた。
DXの本質と経理の役割
経理分野のDXが必要な理由はいくつかある。デジタルテクノロジーの急速な進化によりビジネスそのものが変化していることはもちろん、ESG経営のトレンド、コロナ禍などのグローバルのトレンドに加え、収益性/労働生産性の低さ、少子高齢化の進行、働き方改革の推進、ウクライナ危機による原材料・エネルギー高でビジネス環境が変化しているといった日本固有の状況もある。
こうしたビジネスや社会の変容に対応するためにDXが求められるわけだが、櫻田氏はまずDXの本質を「デジタルテクノロジーによるビジネスの変革」だと定義する。そこでの経理の役割は、「ビジネスフロー・取引のデジタル化」「ビジネスプロセス・業務プロセスのデジタル化」への積極的な関与だと同氏は説明する。
CFO(最高財務責任者)は、データ活用を加速、改善する機能・基盤の整備の一環として、分析のためのデータガバナンスを整えたり、財務・非財務データの収集と蓄積などを進めたりしなければならない。実際に分析を行うスキルの開発も必要だ。そのためには、経理・財務プロセスを効率化し、時間を作り出す必要がある。そこで、経理・財務プロセスのリエンジニアリング、取引からレポーティングまでのプロセス自動化、外部との取引のデジタル化/書類の電子化などを進めることになる。
櫻田氏は、「最終的に経理はビジネスパートナーとして機能するようになる」と言い、CFOは「ファイナンシャルプランニング&アナリスト(FP&A)にシフトしていく」と述べた。