Snowflakeはこのほど、データクラウド「Snowflake」のエキスパート・ユーザーによる事例説明会を開催した。Snowflakeのユーザーコミュニティのメンバーに向けて知見やベストプラクティスを共有し、コミュニティに貢献したメンバーを選出するプログラムとして、「Snowflake Data Superheroes」がある。2023年は、18カ国から72名のData Superheroesが選出され、うち10名は日本から選ばれた。
Snowflake 社長執行役員の東條英俊氏は、「Data Superheroes」について、次のように語った。
「Snowflakeを社内で展開したり、マーケットプレイスでデータを提供したりしている企業から、Data Superheroesは選ばれている。Data Superheroesの方々は、日ごろ、ソーシャルメディアやブログなどを用いて、コミュニティのメンバーにSnowflakeの使い方、Snowflakeを構築・運用する上で苦心したポインなどを発信している。このプログラムのいいところは、何より説得力があるところ」
説明会には、Data Superheroesとして、GENDAの小宮山紘平氏、truestarの藤俊久仁氏、ノバセルの山中雄生氏が登壇した。本稿では、GENDAの取り組みを紹介する。truestarとノバセルの取り組みは追ってお伝えする。
100円玉を数えるビジネス「アミューズメント事業」のDXを
GENDAは、日本全国の約250店舗および海外において、アミューズメント施設であるGiGOを運営している。小宮山氏によると、一番大きな事業がアミューズメント施設運営であり、現在は同事業のデータ基盤の整備に取り組んでいるという。
小宮山氏は、アミューズメント事業の現状について、次のように語った。
「現在のアミューズメント事業はいわば“100円玉を数えるビジネス”であり、ユーザーとひもづいたプレイ履歴が蓄積されておらず、ユーザーひとり一人に適したサービスを提供できていない。また、紙とペンを使った非効率な運用であるため、必要なデータにアクセスするのに時間がかかってしまう」
こうした状況を打破するため、GENDAではアミューズメント施設運用においてDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めることにした。具体的には、「GIGOアプリ」で「プレイ履歴の蓄積」「クーポン券の提供」「キャンペーン情報の告知」を実現し、運用の効率化と定常作業の工数削減の実現を目指した。
Excelでは不可能だった複雑な集計も可能に
こうしたDXを進めるにあたって、Snowflakeによるデータ基盤の構築が行われた。小宮山氏によると、既存の環境はExcelがボトルネックなっており、データのサイロ化も起きていたという。そこで、Snowflakeでデータを一元管理して、このデータを各事業が参照することにした。
現在、GENDAでは、「景品発注の最適化のためのデータ分析」「アミューズメント施設の運営」「オンラインクレーンへのML導入」において、Snowflakeが活用されている。
景品発注の最適化に関しては、店舗の売上やPOSデータをSnowflakeに集約し、これらのデータを集計している。これにより、集計処理が高速になり、Excelではできなかった複雑な集計も可能になった。またそれまで、京浜発注時に独自の指標を使っていたが、指標の算出が早くなったうえ、これまでなかった指標ができたそうだ。
アミューズメント施設運営においては、必要なデータを閲覧するツールを社内で開発し、将来は店舗運営すべてをこのツールに統合する予定だという。
クレーンゲームをPC上のブラウザやスマホアプリで遠隔操作する「オンラインクレーン」においては、SnowflakeをデータソースとしてMLOpsを構築し、データの前処理の一部をSnowflake上で実施している。これにより、景品のレコメンデーションを行っているそうだ。「レコメンデーションにより、ユーザーは今まで自分が知らなかったキャラクターを知ることができ、当社はユーザーの趣向に合わせて景品を進められる」(小宮山氏)
2分かかっていた集計処理が5秒で完了
小宮山氏は、Snowflakeを選んだ理由として、他のDWHと比較して、「AWS(Amazon Web Services)と連携しやすいこと」「運用コストがかからないこと」「料金体系がわかりやすい」を挙げた。GENDAはAWSを使っていたことから「Amazon Redshift」と「Google Cloud BigQuery」が候補だったという。
しかし、BigQueryには「AWSからGCPへのデータ転送が大変」「料金体系が特殊」という懸念があった。また、Redshiftは料金面に加えて、動作が不安定で、正常であることを保つ担当者が必要であるなど、「どちらも痛しかゆしだった」と、小宮山氏は語った。
対するSnowflakeはコンピュートとストレージが分離しているので、運用コストが抑えられ、ウェアハウスの起動時間が料金の基準となっているので、見積もりやすかったそうだ。
さらに、Snowflakeは容易にデータシェアリングが行えるという特徴も持つ。クロスクラウド・クロスリージョンを活用した既存事業へのデータ基盤の導入、協業企業とのデータ連携など、データシェアリングの活用もGENDAのビジネスと相性がよさそうと踏んだとのこと。
Snowflakeの導入効果として、週当たり1人日の運用工数がほぼゼロになり、2分かかっていた集計処理が5秒で終わるようになった。そもそもExcelでは不可能だった集計も可能になったという。
小宮山氏は今後の展望として、1つのサービスで得た知見をグループ全体で生かせるように、こうしたデータ活用をアミューズメント施設以外の事業にも展開していきたいと語っていた。