ネットアップは3月10日、都内で今年2月に発表した大容量オールフラッシュストレージの新製品「NetApp AFF Cシリーズ」の説明会を開催した。新製品については、米NetApp シニアディレクター, ONTAPハードウェア プロダクトマネージメントのジョージ・パンボリス氏が解説した。
QLCドライブ搭載の「NetApp AFF Cシリーズ」
まず、製品の解説にあたりパンボリス氏は市場における顧客ニーズが変化について「コストに対する厳格化と、それに即した予算の関係からパフォーマンスが良く、低コストのソリューションにシフトしている。また、サステナビリティは戦略的な必須事項になっている」と述べた。
パンボリス氏によると、2020年に世界におけるITの電力需要は2%だったが、2030年には8%に拡大し、作成されたデータのうち実際に利用され野は32%であるものの、データセンターのDC(直流)エネルギー消費に占めるストレージの割合は同年に38%を占める可能があるほか、2025年にはデータの49%がパブリッククラウド環境に保存されることが見込まれている。
同社は、2021年にハードウェアを生産する際の炭素排出量を推定するためのライフサイクル分析手法である「MIT Product Attribute to Impact Algorithm(PAIA)」コンソーシアムに参加しており、ハイブリッドフラッシュストレージの「FAS」とオールフラッシュストレージの「AFF」のカーボンフットプリントレポートを作成。
さらには、環境、労働慣行・人権、倫理、持続可能な資材調達の影響を含む、財務以外の幅広い管理システムを評価するEcoVadisでは、2022年にゴールドの評価を得ており、こうした市場環境をふまえ、発表されたのがNetApp AFF Cシリーズというわけだ。
パンボリス氏は、同社が提供しているFASとAFF Aシリーズを比較し「FASは価格が低く、レイテンシは5ミリ秒~10ミリ秒、Aシリーズは価格は高いがレイテンシは1ミリ秒だ。顧客からは、そのギャップを埋める製品がないのかという声もあり、レイテンシが2~4ミリ秒のQLC(クアッドレベル・セル)ドライブ搭載のCシリーズを用意した。コントローラにQLCを搭載したいからというわけではなく、ONTAPを最適化することが目的であり、耐久性の観点からQLCを搭載してアプリケーションのレスポンスを向上させることも目的だ」と説明した。
Cシリーズは「NetApp AFF C250」「NetApp AFF C400」「NetApp AFF C800」の3モデルを揃えた。HAシステムでC250は物理容量122TB~734TB、最大有効容量が2.9PB、サイズは2U。C400は物理容量122TB~1.46PB、最大有効容量は5.9PB、サイズは4U+2Uドライブシェルフ。C800は物理容量182TB~2.2PB、最大有効容量8.8PB、サイズは4U(SSD内蔵)。
1つのクラスタに最大24ノード格納できるため、122TB~8.8PB×12まで可能としており、Cシリーズを通した122TB~26.4PBまで拡張できるという。ストレージサイロを排除し、無停止で容量の拡張が可能なほか、SAN、NAS、オブジェクトプロ所をオールフラッシュ、大容量フラッシュ、ハイブリッドストレージの単一のクラスタに統合を可能としている。
パンボリス氏は「C250と1.8TBのSAS HDDと比較するとラックスペースが98%、消費電力は97%それぞれ削減できることに加え、50倍の密度を実現可能だ」と話す。
「ONTAP One」を標準搭載、ランサムウェア対策も
Cシリーズはソフトウェアスイートの「ONTAP One」が標準搭載されており、同社のポートフォリオ全体でファイル、ブロック、オブジェクトに対応した自動化、効率化、データ保護、セキュリティ機能をライセンスモデルで提供。
セキュリティについてランサムウェア対策は保護・検知・回復に加え、AIベースのドキュメンテーションを可能としている。同氏は「ランサムウェアがファイルを暗号化した瞬間にリアルタイムで検知し、即時にスナップショットをとり、変更・削除不可の状態にすることができる。リアルタイムで行われるため攻撃された瞬間にリアルタイムで検知してデータの保護が可能だ」と強調した。
クラウド対応は、Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azure、Google Cloud Platform(GCP)といったクラウドへのバックアップ、ティアリング、キャッシュなどに対応し、ハイブリッド・マルチクラウドストレージの管理ができる。
適用例としてはハイブリッドストレージからフラッシュへの更新のほか、メディア/レンダリング、AI/ML(機械学習)・アナリティクス、データレイク、ファイルストレージ、ホームディレクトリ、ユーザーデータ、非ミッションクリティカルなデータベース、VMwareをはじめとしたティア1のワークロード(2~4ミリ秒のレイテンシであれば十分なもの)。
また、データベースやVM(仮想マシン)のテスト/開発用サンドボックスのコピー(NAS、SAN)、バックアップの高速リカバリ、バックアップ統合(Snapshot、SnapMirror)の対象システム、データ階層化の対象システムなどのティア2のワークロード((容量が主要な要件である場合)となる。
新たな保証プログラムも発表
一方、低価格市場向けのAFF Aシリーズ「AFF A150」も発表しており、従来の「AFF C190」のリフレッシュ・アップデート版となる。C190と比べ20~40%の性能向上を図っており、24代の内蔵960GB、3.8TB、7.6TBのSAS SSDをサポートし、最大2基のSAS SSD拡張セルフ、SSD最大72台、最大有効容量は2.2PB。ONTAP 9.12.1(具体的なリリースは未定)を搭載したシステムで集荷し、バックサポートはパッチバージョンがONTAP 9.11.1、9.10.1を予定。
そのほか、パンボリス氏は保証プログラムとして「ストレージライフサイクルプログラム」を説明。ストレージライフプログラムは追加料金を支払えば、AFFとFASに搭載するコントローラを3年に1度無償提供する。3年後にオンプレミスを継続して利用するか不明でクラウドに移行する場合は、差額分をクラウドのクレジットとして利用してもらうというものだ。
パンボリス氏は「他社の場合はオンプレミスだけという場合が多いが、オンプレミス、クラウドでも可能と、フレキシブルであるとともにAWS、Azure、GCPに対応しているのは当社だけだ」とネットアップの優位性を述べていた。