岡山大学、科学技術振興機構(JST)、かずさDNA研究所の3者は3月7日、さまざまな「キウイフルーツ」の仲間(マタタビ属)の全ゲノム配列を解読し、進化の過程でキウイフルーツが何度も新しいY染色体を重複して生み出しており、これには従来の定説を覆す新しい進化メカニズムが関与している可能性があることを提唱したと共同で発表した。
また、キウイフルーツの雄は花が多い・花が早く咲くといった「雄らしさ(雄に有利な特徴)」を有しているが、この特徴が従来説のようにY染色体が作られる過程で生み出されたものではなく、性別決定遺伝子そのものが本来持つ機能であることを明らかにしたことも併せて発表された。
同成果は、岡山大 学術研究院 環境生命科学学域(農)の赤木剛士研究教授を中心に、かずさDNA研究所、香川大学、ニュージーランド・Plant&Food Research研究所、米・カリフォルニア大学デービス校、英・エディンバラ大学の研究者も参加した国際共同研究チームによるもの。詳細は、英科学誌「Nature」系の植物に関する全般を扱う学術誌「Nature Plants」に掲載された。
性別を決定する性染色体は、ヒトを含むほ乳類の場合はXY型で、X染色体を2つ持つと雌となり、XとYの両染色体を1つずつ持つと雄となる。従来の考えでは、Y染色体は長い生命の歴史の中で「雄らしさ(雄にとって有利な特徴)」を維持するための遺伝子を多数獲得するように進化した結果、X染色体とは異なる形状が成立されたとされている。
一方、植物の多くは雄しべと雌しべを有する両性花で成り立っているが、いくつかの植物は動物と同じく明確な雌雄の差が存在し、その多くがほ乳類と同様にXY型の性染色体を持つ。植物の性染色体はちょうど100年前に発見されて以来長い研究の歴史があるが、まだ性染色体の進化過程やその意義などはまだ明らかになっていない。動物と同様に、植物の雄個体にも「雄らしさ」があり、この原因がY染色体に散在する多くの雄特異的な遺伝子群に由来すると考えられてきたが、その正体については謎に包まれていたという。
そこで研究チームは今回、これまで性決定遺伝子の研究が盛んに進められてきたキウイフルーツの仲間のマタタビ属において、さまざまな種の全ゲノム解読を行い、性染色体の進化過程を明らかにする調査を行うことにしたという。
マタタビ属の全ゲノム情報を比較した結果、共通の性決定遺伝子である「Shy Girl遺伝子」と「Friendly Boy遺伝子」はゲノム中で頻繁に重複して存在しており、種によって次々と独立した新しいY染色体を進化させていることが判明。さらに、Y染色体は極めて短期間で雄に特異的なゲノム領域を独立して進化させており、これらはゲノム内を飛び移っていく因子である「トランスポゾン」が急速に蓄積することで成立することが明らかになったとする。
一方、多様なマタタビ属植物の雄個体では花が多い・開花が早いといった雄らしさを共通して示すが、意外なことに、これらの種で新しく進化したY染色体間では、定説にあるような「雄らしさ」を作り出すような性決定遺伝子以外の共通遺伝子群が存在していないとした。