宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2月28日、諏訪理(すわ まこと)氏と米田あゆ(よねだ あゆ)氏の2名を2021年度宇宙飛行士候補者を選抜したことを発表した。

今回、宇宙飛行士として選ばれたのは、諏訪理(すわ まこと)氏と米田あゆ(よねだ あゆ)氏の2名。諏訪氏は、1977年生まれの46歳。2007年にプリンストン大学大学院地球科学研究科修了後、青年海外協力隊でルワンダに赴いた後、国際連合・世界気象機関(WMO)に入社。2014年より世界銀行に入行し、現在は世界銀行の上級防災専門官を務めている。これまでの最年長合格者であった油井亀美也 宇宙飛行士(当時39歳)の記録を更新する最高齢での合格者となった。

  • 米田あゆ 宇宙飛行士候補者と諏訪理 宇宙飛行士候補者

    2021年度宇宙飛行士候補者を選抜試験を経て選ばれた米田あゆ 宇宙飛行士候補者(左)と諏訪理 宇宙飛行士候補者(右)。諏訪氏は、仕事の関係上、米国に滞在しているためオンラインでの参加となった

一方の米田氏は1995年生まれの28歳。2019年に東京大学医学部医学科を卒業後、東京大学医学部附属病院、日本赤十字社医療センターなどで外科医師として勤務。今回の選抜で、向井千秋 宇宙飛行士ならびに山崎直子 宇宙飛行士に続く3人目の日本人女性宇宙飛行士に向けた候補者として選ばれ、宇宙飛行士として認定されれば、日本人の現役宇宙飛行士としては最年少となる。

  • 会見にはJAXAの山川宏 理事長(最右)ならびに、JAXA有人宇宙技術部門の佐々木宏 理事(最左)も出席

    会見にはJAXAの山川宏 理事長(最右)ならびに、JAXA有人宇宙技術部門の佐々木宏 理事(最左)も出席

今回の宇宙飛行士候補者募集は、前回から約13年ぶりということ、ならびに応募資格・条件の全面的な見直しが行われたことから過去最多の4127名が応募。書類選抜を経て、4回の選抜試験を経て、今回の2名が選出された。 2名ともに選出された連絡が届いたのが昨日ということで、前回の募集にも応募し、2回目の挑戦だったという諏訪氏は、「連絡をもらった際は、驚いたのと、大きな責任を背負ったという自覚ができた。気持ちが高ぶってあまり眠れなかった」と、知らせを受けたときの心情を説明。今後、大きなキャリアシフトになると思うとした。

また米田氏も、「最初は喜びと同時に驚きがあった。その後、選んでいただいた責任感と使命を感じて、かなり身が引き締まる思いがした。今の自分を、ここまで支えてくれた人に感謝の気持ちが湧き上がりました」と、かなりの驚きだったことを語っていた。

  • 2人とも選抜されたとの連絡は昨日、電話であったという

    2人とも選抜されたとの連絡は昨日、電話であったという

諏訪氏は、東京生まれの茨城県つくば市育ち。JAXA筑波宇宙センターが近く、また1985年開催の国際科学技術博覧会(つくば万博)などの影響もあり、宇宙飛行士へのあこがれを抱いていたという。

米田氏は、東京生まれの京都府京都市育ち。幼少期に父親から向井千秋 宇宙飛行士の伝記をもらったことがきっかけだという。「すごく宇宙から地球を眺めて感動している向井さんの姿が印象深かった」と、当時を振り返る。

2名は今後、2年ほどのJAXAによる基礎訓練を経て、訓練結果の評価を踏まえ、JAXA宇宙飛行士に認定される見通し。国際宇宙ステーション(ISS)や月周回有人拠点「ゲートウェイ」、月面などでの活躍が期待され、JAXAの山川宏 理事長は、「これまでの宇宙飛行士と比べて、可能性がより広がっている」と今回選抜された2名に対する期待を口にする。「これまで人類の活動が、長い間、低軌道上で持続的になされてきており、完全に人類がそこに居ても不思議ではないという時代がきた。現在、民間も活躍する時代になってきており、宇宙ステーションの形態も国家主導のものだけでなく、民間主導のものもでてくる。JAXAとしては、そうしたいろいろなプラットフォームを、どんどん使っていく形になると思う。そのため、JAXAとしても、民間の経済活動を支えるといった活躍や、新しいものを切り開くといった活躍、将来の月・火星に向けたさまざまな技術の習得・活動など、いろいろと宇宙飛行士にやってもらうことが増えてくると思っている」と、今後、宇宙飛行士の活躍の舞台が、これまで以上に広がっていくことが予想されることを強調。そうした時代の変化に合わせて、今後も5年をめどに新たな宇宙飛行士の募集を続けていく予定であるとした。この5年程度のスパンは、今回の2021年の募集開始の時点からの計算とJAXAでは説明しているため、次回は早ければ2026年ごろに実施される計算となる。

山川理事長は、「(応募条件などを見直しは)宇宙飛行士の役割が拡大していくと思ってのこと。そうした時代で重要なのは、仲間としてうまくやっていくことと、いろいろな状況に柔軟に対応できること。今回の2名もそうだが、今後、さらに柔軟な対応ができる人材が求められることになると思っている。門戸を広げたことで、多様な人材に応募してもらえるようになることは、こうした今後につなげていくということでもある。より一般的な、身近な存在になっていってもらいたいし、そうした感覚を持った人がどんどん入ってきてもらいたいと思っている」と、今後も理系出身者に限らず、時代が求める宇宙飛行士の資質を持った人材を広く募集し続けるとした。

  • 宇宙飛行士候補者記者会見

なお、JAXA有人宇宙技術部門の佐々木宏 理事によると、4127名の応募者のうち、自然科学系出身ではない人の割合はおよそ20%ほどであったという。「(最終選抜試験となった)第三次選抜試験は10名が残っていたが、中には自然科学をバックグランドに持たない人や、大学などで自然科学系を学んだが、現在は営業やコンサルタントを仕事にしている人も残っており、多様性のある人たちだったと認識している。最終的に選ばれた2名のバックグランドは自然科学であったが、全員が非常に優秀な人たちであり、誰が選ばれてもおかしくないレベルだったと思っている。(選抜された)2名は、総合的に判断として、医学的な部分やさまざまな操作能力、プレゼンテーションなどの能力などを総合的に判断した結果として選ばれた」と、(応募条件の変更が)優秀な人材が多く応募してくれた結果につながったことを強調している。