アイスタイルは、化粧品に関する消費者情報をデータベース化し、企業の各種マーケティング活動を支援する企業として立ち上げられた。現在は、コスメ・美容の総合サイト「@cosme」や化粧品ブランド向けの広告サービスやSaaS型のマーケティング支援サービスの展開、またそれらのデータを活用した化粧品専門ECサイトや化粧品専門店を運営している。

  • 左:@cosme STOREニュウマン横浜店 右:フラッグシップストア:@cosme TOKYO

「生活者中心の市場の創造」をビジョンとして掲げ、「Who we are(我々は何者か)」を問い続けるアイスタイル。同社はあらゆるステークホルダーと好循環を生み出すことで、生活者を軸とした市場を創造するため、「サービスが多様化し、ユーザーが分断している」といった課題解決に向けてカスタマーエンゲージメントプラットフォーム「Braze」を導入した。

今回は、アイスタイルが抱えていた課題をいかに解決したのか、また今後どんな未来を描いているのかについて聞いた。

  • 左から、アイスタイル 顧客体験事業ユニット ユニット長 作間友幸氏、Appグロースグループ マネージャー 奥家沙枝子氏、グロース推進部 部長 渡辺智氏

ユーザー中心のコンテンツ提供に向けサービスを乗り換え

アイスタイルが導入を決めたBrazeは、日々ブランドとつながっている消費者に、印象的な顧客体験を提供するためのカスタマーエンゲージメントプラットフォームだ。

「入ってきたサービスによって、ユーザーの興味関心は異なりますが、これまで、弊社のコンテンツや発信する情報などは、提供するすべてのユーザーに向けて一括で提供する、画一的なものになっていました。ECや店舗販売、メディアと多様なサービスを展開しているがゆえに、それぞれが連携できずにユーザーが分断しているのが課題として存在していたのです。そこで、それぞれのコンテンツを連携し、お互いの現状を知って各々分析することで、コンテンツの内容や情報を出し分けたいと考え始めたのが、Brazeを導入したきっかけです」(渡辺氏)

Brazeの導入前も近しいサービスを導入していたが、「生活者(ユーザー)中心のコンテンツを作る」「リアルタイム性がある」「ノーコードで運用できる」という3つの観点から、より現場の人間が使いやすく、アプリとWebの2つの施策の両方を大切にできるサービスへ乗り換えることを検討していたのだという。

「BrazeのUXは現場が動かしやすく、マーケターがすぐに施策を動かすことができる仕様でした。実を言うと、ほとんど他社のサービスを導入することを決めかけていたのですが、Brazeなら導入に際し懸念点だった『社内的な難易度』をクリアできることがわかったので導入を決めました」(作間氏)

  • インタビューの様子。Brazeの導入経緯を語る

元々2021年の7月からプロジェクトを始動し、8月の1カ月間でツールの選定・検討を行い、9月には導入と施策の開始、というスピード感を求めていたアイスタイルにとっては、同社が描いていたスケジュール通りに運用が始められるというポイントもBrazeに決定した決め手だったようだ。

50~60本の施策を日常的に動かす運用をサポート

ここまで導入について伺ってきたが、実際にBrazeの利用を開始してから、どのような効果を感じているのだろうか。

「Brazeの導入後、@cosmeの商品ページにアプリ訴求のポップアップバナーを表示することからスタートしました。バナーにどんな言葉が並ぶかによってクリック率やダウンロード数が大きく変化することが分かったので、BrazeのABテスト機能を活用して、より効果の出る文面になるようPDCAを回していきました」(奥家氏)

これらの施策の結果、アプリのダウンロード数は、導入からわずか3カ月ほどで約3倍まで増加した。アプリのMAU(Monthly Active Users:Webサイトやアプリ、各種オンラインサービスで、特定の月に1回以上利用や活動があったユーザーの数)も、導入前と比べると1.5倍ほど増加したのだという。

  • インタビューの様子。Brazeを導入して得た効果を語る

また今後はBrazeを活用しながら「メディアからアプリに入ってきた人」「ECからアプリに来た人」「実店舗からアプリに来た人」というように、どのような経路をたどってたどり着いた顧客なのかをセグメントし、配信する情報を出し分けるような取り組みも行っていきたいという。

「ここで挙げた施策はほんの一例で、弊社では50~60本程度の施策が日常的に動いています。Brazeを導入してからデジタルマーケティングの運用人数も大幅に増やし、元々3名だったところ、現在では30人弱がBrazeを活用した施策の運用にジョインしています。この増員も意図的に行っているもので、結果が見えるようになったことでやってみたいと思うアイデアが社内中で増えたということが背景にあります。社内トレンドとして『Brazeならなんとかなる』という言葉が日常的に使われているくらい、社員のやってみたいという気持ちをサポートしてくれるツールだと感じています」(作間氏)

最後に、渡辺氏に今後の展望を聞いた。

「我々は、世界最高水準のユーザー体験を届けることを目標に、日々業務を推進しています。その目標の達成に向けて、より多くのデータ連携、ユーザーに寄り添ったコミュニケーション手段の最適化・シナリオの構築と、手掛けなければならないコトが多くあります。組織、プロジェクトとトライアル&エラーを実行していく基盤が揃いつつあるので、施策実施の速度・精度にこだわりを持って推進していきたいと考えています」(渡辺氏)