HacobuとBIPROGYは2月27日、物流・輸配送領域において資本業務提携を締結したことを発表した。同日にはメディア向け発表会が開かれ、同提携の目的や両社が今後取り組む協業の内容が明かされた。

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2社のトラック予約受付サービスを統合し、販売でも協業

今回の資本業務提携に基づき、BIPROGYは2023年4月1日にトラック予約受付サービス「SmartTransport(スマートトランスポート)」をHacobuへ譲渡する。同サービスは、Hacobuが提供するトラック予約受付サービス「MOVO Berth(ムーボ・バース)」に統合される。

BIPROGYの既存顧客に対しては、引き続きSmartTransportのサービスは提供されるが、順次MOVO Berthへの切り替えを進める計画だ。

また、両社は販売代店理契約を締結。今後はBIPROGYもMOVO Berthをはじめ、Hacobuが提供するクラウド物流管理ソリューション群「MOVO」を販売していく。

同提携に際しては、Hacobuの財務基盤の強化や両社による協業支援を目的に、BIPROGYグループのCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)であるEmellience Partnersが4.9億円の出資を行った。

  • HacobuとBIPROGYによる資本業務提携の概要

    HacobuとBIPROGYによる資本業務提携の概要

今回の業務提携について、Hacobu 代表取締役社長CEOn佐々木太郎氏は、「2年ほど前から、BIPROGYの物流事業担当者と両社での協業について話し合ってきた。協業にあたっては、競合関係にあるサービスをどうするかが課題だったが、当社がサービスを譲り受ける形式を打診。その後、BIPROGY側でも検討を重ねて今回の提携に至った。大企業の新規事業をスタートアップにEXITする本提携は、新しいオープンイノベーションの形だと考える」と語った。

  • Hacobu 代表取締役社長CEO 佐々木太郎氏

    Hacobu 代表取締役社長CEO 佐々木太郎氏

BIPROGYは、旧日本ユニシス時代から物流分野における基幹システム開発および他システムとの連携などに携わってきた。現在は統合WMS(倉庫管理)ソリューションを中心に、計画系、管理系、情報系など周辺領域におけるシステム構築のノウハウや知的財産を有しており、輸配送業務の支援ソリューションも提供する。

加えて、物流だけでなく調達・生産から小売り・消費までのサプライチェーンを統合する「垂直統合」と、企業の垣根を超えて物流機能・情報を共同利用する「水平統合」、IoTやAI、ロボティクスを活用した「個社の先進化・省人化」にも取り組む。

SmartTransportは2018年に提供開始したソリューションだ。BIPROGYはリスクマネーが許容されやすいスタートアップのHacobuに同サービスを譲渡することで、サービス内容の強化と同ソリューションを活用したビジネスの拡大を図る公算だ。

BIPROGY 業務執行役員 佐藤秀彰氏は、「サービス統合後は物流、食品を中心に新たな業界にも提案していきたい。今回の提携は当社のサービスを大きく成長させるだけでなく、新しいことにチャレンジし、物流関連ビジネスを拡大させるチャンスと捉えている」と説明した。

  • BIPROGY 業務執行役員 佐藤秀彰氏

    BIPROGY 業務執行役員 佐藤秀彰氏

自動運転輸送の実現に向け、利用事業所数3万超を目指す

Hacobuでは、個社の枠を越えた物流ビッグデータの分析・活用基盤となる「物流情報プラットフォーム」の構築を推進している。

同社とBIPROGYは今回の提携において、「物流の2024年問題」など物流・輸配送領域における社会課題解決の手段として同プラットフォームの必要性についても合意しており、プラットフォーム実現に向けた協業も進める。

具体的には、Hacobuが提供するコンサルティングサービスと、BIPROGYによるシステムインテグレーションサービスで培った知見・ノウハウ、物流ソリューションを活用し、顧客の保有するシステムなどとの連携を通じて企業・業種の垣根を超えたデータ活用を支援する。

  • HacobuとBIPROGYは、顧客と協力して物流情報プラットフォームの構築を推進する

    HacobuとBIPROGYは、顧客と協力して物流情報プラットフォームの構築を推進する

「これまで、物流に関わる事業所に対して『MOVO』シリーズのソリューションを提供し、現在は1万拠点に導入してもらっている。BIPROGYと協力して、この数を2025年までに3万拠点に増やしたい。これにより、国内物流拠点の4分の1~5分の1に相当する事業者に導入されると当社では試算しており、物流関係者が1つのプラットフォームを利用する素地を作れる」と佐々木氏。

3万拠点にMOVOが導入されることにより、従来は紙でやりとりしていた情報をデジタル化するための基盤ができる。そして、同プラットフォーム上にさまざまな情報が流れ、ストックされるようになることで、ビッグデータを活用した業務最適化が可能になると両社は想定している。

将来の高速道路を利用した自動運転の実用化を見据えて、両社は自動運転トラック輸送サービスにおけるデータ基盤整備と、データ活用においても長期的に協力体制を構築していくという。

  • 将来の自動運転トラック輸送サービスの土台となるデータ基盤も構築

    将来の自動運転トラック輸送サービスの土台となるデータ基盤も構築