ファンケルは2月23日、得られた観察画像を画像解析から数値で評価する方法を開発し、皮膚に弾力性を与えてハリを保つ役割を持つタンパク質「エラスチン線維」が加齢により湾曲すること、特に40代で、急激に同線維の形状に変化が起こることを発見したと発表した。

エラスチン線維は表皮の下にある真皮の構造を構成するタンパク質で、同線維の変性は皮膚のたるみやシワの原因になると考えられている。今回の研究では、20~60代の女性35人を対象に、皮膚組織を表皮から上層真皮まで断層画像で見ることが可能な「Multiphoton Tomography(MPT) Compact」を用いて、頬部のエラスチン線維の画像が取得された。

そして得られた画像に対し、拡張性の高さと、さまざまな画像処理や解析の課題に対応している点が特徴の画像処理ソフトウェア「ImageJ(Fuji)」を用いて、より客観性の高いエラスチン線維構造の数値評価法の開発を検討することにしたという。

これまでの研究から、エラスチン線維の加齢による構造変化は、太く、短く、直線性が低下して湾曲することがわかっていた。そこで今回の研究では、線維の「質」を決める線維の「直線性」と「細さ」についての評価法を検討することにしたとする。

具体的には、エラスチン線維の直線性を算出する方法として、同線維の始点と終点を結ぶ直線の長さ(a)と、実際の同線維の長さ(b)が測定され、それぞれの比(a/b)が「直線性数値」として導き出されたほか、同線維の細さについては、線維の直径が測定され、それを「細さ数値」としたという。

また、エラスチン線維の直線性と細さについて、5段階点数の目視判定の評価基準を設定。数値評価開発に使用された同線維の画像に対し、標準基準を用いて同線維の研究に精通する専門評価者5人による目視判定評価を実施し、それぞれ直線性と細さの「目視スコア」としたという(目視スコアが高いほど、同線維は直線性が高く、細いことを示す)。

さらに、35人分のエラスチン線維構造画像を、同線維の直線性の「数値評価」と「目視スコア」、同線維の細さの「数値評価」と「目視スコア」をグラフにプロットする形で比較を実施。その結果、数値評価は「線維の直線性」および「線維の細さ」の両指標において、目視評価スコアとの間には相関が認められたことから、この数値評価方法がMPT Compactによる同線維の構造を客観的に評価する方法としたという。

  • 数値評価(直線性、細さ)の求め方

    数値評価(直線性、細さ)の求め方。湾曲しているエラスチン線維の始点と終点を結ぶ直線の距離a(赤)と、実際の線維の長さb(緑)の比(a/b)が、直線性を示す「直線性数値」とされた。また、同線維の直径が測定され、それが「細さ数値」とされた。直線性数値が低くなると、同線維が湾曲していることになる (出所:ファンケルWebサイト)

加齢によるエラスチン線維の構造変化、中でも直線性の低下と湾曲化がこれまでの研究で確認されていたことから、今回得られた数値評価方法を用いて年代別の同線維の構造変化の確認を目的に、MPT Compactにより観察された得られた20~60代の各年代における同線維の画像を利用して、直線性と年齢の関係が調べられたところ、加齢によりエラスチン線維の直線性の低下が認められ、40代で急激に低下が起こっていることが判明したと研究チームでは説明する。

  • エラスチン線維目視判定の評価基準

    エラスチン線維目視判定の評価基準 (出所:ファンケルWebサイト)

なお、同社のこれまでの研究で、エラスチン線維の構造が加齢により形状的に変化することは、摘出皮膚においては確認されていたが、今回の研究であるMPT Compactによる実際の肌の観察からも、加齢による同線維の構造変化が確認されたこととなった。

研究チームでは、今回の研究によりエラスチン線維の質を決める構造が、40代で急激に直線性が低下して湾曲する変化が起こっていることが確認されたが、このことはたるみやシワといった老化兆候が顕著となる年代と一致しているとしており、この兆候を予防するためには、40代までのエラスチン線維の構造変化を抑制することが重要であることが示唆されたともしている。