東京医科歯科大学は2月15日、医学部医学科カリキュラム管理運営の一環として、Institution for a Global Society(IGS)の協力のもと、同学科学生を対象にBIG5やコンピテンシーの計測・分析を実施したところ、大学2年生以上は、思考パターンや行動パターンといった高い成果につながる行動特性(コンピテンシー)のスコアから1年後の学業成績の予測ができる可能性が示唆されることを見出したと発表した。

今回の分析の対象となったのは、同大医学部医学科の第1学年93名、第2学年76名、第5学年81名。2019年から2020年にかけて、IGSの組織で成功している人材の思考・行動から導き出される共通の「行動特性(コンピテンシー)」と、潜在的な性格「気質」を可視化するAIを用いた360度評価ツール「GROW360」を用いてコンピテンシーとNeuroticism(繊細性)、Extraversion(外向性)、Openness(開放性)、Agreeableness(協調性)、Conscientiousness(自律性)の5つの要素の程度の組み合わせで各個人の性格を表すBIG5を計測したほか、コンピテンシー計測から1年後の第2学年および第5学年の学業成績を対象としたとする。

具体的には、成績予測の可能性を探ることを目的に第2学年および第5学年の学業成績と、コンピテンシー、気質、気質組み合わせの相関分析を実施したほか、従属変数を学業成績、説明変数をコンピテンシー25項目、気質5項目、気質組み合わせ10項目で検討を行い、データ数から適切な説明変数の数の上限を判断し、説明変数は相関係数の絶対値が上位のものを使用したとするほか、総当たり法で重回帰分析を実施、自由度調整済決定係数が最大となる組み合わせを検証したという。

その結果、相関分析により、第1学年時は学業成績とコンピテンシーの相関はあまり見られなかった(最大で相関係数0.24ほど)ものの、第2学年および第5学年では学業成績と複数のコンピテンシーにある程度の相関が確認できた(最大で0.5ほど)とする。一方で気質と学業成績には高い相関は見られなかった(最大で0.28ほど)ともしている。

また、重回帰分析により、第2学年時の成績は約1年前に測定したコンピテンシーの誠実さ、感情コントロール、解決意向の他者評価スコアで決定係数(予測精度)が0.368であり、第5学年時の成績は、誠実さ、疑う力、成長で決定係数が0.240となり、第2学年時の成績は、約1年前に測定したコンピテンシーの誠実さ、感情コントロール、解決意向の他者評価スコアで、ある程度予測できる可能性が示唆されたと研究チームでは説明しているほか、第5学年時の成績は、誠実さ、疑う力、成長である程度予測できる可能性が示唆されたとしている。

研究チームでは、これらの結果を踏まえ、誠実さなどのコンピテンシーが低い大学生に、コンピテンシーが向上する支援を行うことで、成績向上の可能性を期待することができる可能性が示されたとしており、今後、得られた所見の普遍性につき、研究活動として分析していく予定だとしている。