東京都と日本マイクロソフトは2月9日、「東京全体のDX推進に向けた連携・協力に関する協定」の締結式を実施した。締結式には東京都知事の小池百合子氏とともに、2月1日付けで日本マイクロソフトの代表取締役社長に就任した津坂美樹氏が出席した。

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東京都の職員4万人を対象にMicrosoft Teamsの研修

同協定に基づき、東京都と日本マイクロソフトは今後、東京のフィールドを生かした先進サービスの創出、クラウドインフラをベースとした行政DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進、都および区市町村職員の人材育成、国内外の行政機関などとのネットワーク構築に取り組む。

同協定は、オンライン上での電子署名方式で締結された。知事名による電子署名での協定締結は東京都で初となる。

  • 締結式の様子。日本マイクロソフト 代表取締役社長 津坂美樹氏(左)、東京都知事 小池百合子氏(右)

    締結式の様子。日本マイクロソフト 代表取締役社長 津坂美樹氏(左)、東京都知事 小池百合子氏(右)

小池都知事は、「世界的なデジタル先進企業のマイクロソフトがパートナーとなったことを心強く思う。今後の取り組みとしては、まず、行政分野で圧倒的に不足しているデジタル人材育成に取り組む。東京都の公務を行う職場でデジタルツールの活用を促進する実践的なプログラムを導入し、区市町村の職員の方々にも対象を広げていく」と今後の方針を語った。

日本マイクロソフト 代表取締役社長の津坂美樹氏は、「今回の連携では、当社がグローバルに培ってきたDXの知見を基に、クラウドを活用した効率的でセキュアな行政サービスの構築、デジタル人材の育成、海外関係機関との意見交換など、テクノロジー活用に限らない多面的な支援を行っていく」と意気込んだ。

デジタル人材育成にあたっては、都・区市町村職員向けのリスキリング施策である「東京デジタルアカデミー」で提供する研修プログラムに、日本マイクロソフトから新しい研修メニューが提供される。

  • 連携協定における取り組みの第1弾を説明する小池都知事

    連携協定における取り組みの第1弾を説明する小池都知事

研修プログラムの第1弾は、Microsoft Teamsをテーマとしたものだ。2023年2月の中~下旬から、東京都の職員4万人を対象にオンライン講習が複数回実施される予定だ。講習の内容はアーカイブでも提供し、ニーズや導入時期などに合わせて区市町村の職員にも提供される。

今後は日常業務で利用する頻度の高い、Microsoft EdgeやOutlook、Word、Excelなどの使い方の基礎を学べる研修メニューも追加する計画だという。

このほか、東京都が定めるデジタル人材のうち、「ICT職」に当たる人材を1年間、日本マイクロソフトに派遣する研修プログラムも実施する。こちらのプログラムでは、手始めにデジタルガバメントの実現などを推進する東京都デジタルサービス局から人材が派遣される。

ツール調達や新サービス開発を62区市町村と共同化

東京都は2023年度中を目途に、行政と民間が協働して革新的なサービスを生み出し、62の区市町村を包括した東京全体のデジタル化を推進する組織として「GovTech東京」を設立する。

GovTech東京におけるデジタルツールの調達や、ITを活用したサービス開発などを東京都と62区市町村で共同して行えるような体制も、日本マイクロソフトと共同で構築していく。

東京都副知事の宮坂学氏は、「具体的な調達方法などはこれから研究する必要があるが、グローバルにどのようなデジタル活用を進めているか、日本マイクロソフトと知見を共有し学んでいく。東京都の62区市町村、全てのICT担当者に意味のあるサポートができるようにしていきたい。そのためのパートナーも今後増やしていきたい」と明かした。

  • 東京都 副知事 宮坂学氏

    東京都 副知事 宮坂学氏

宮坂副知事によれば、今回の連携協定にあたっては具体的な施策の検討に時間をかけ、日本マイクロソフトと協議を重ねたという。

日本マイクロソフト 業務執行役員 デジタル・ガバメント統括本部 統括本部長の木村靖氏は、「今回の協定は、東京都の職員の働き方改革のみならず、都民のQOL(生活の質)向上につながるテクノロジー活用を前提としている。そのために、都だけで取り組みを完結せず、区市町村と好事例を共有するなど横連携を進めていこうとしている点が特徴的だ」と述べた。

  • 日本マイクロソフト 業務執行役員 デジタル・ガバメント統括本部 統括本部長 木村靖氏

    日本マイクロソフト 業務執行役員 デジタル・ガバメント統括本部 統括本部長 木村靖氏

今回の協定で、日本マイクロソフトと自治体との包括連携協定は8件目となる。同社は今後、東京都との協定を通じた事例をモデル化し、他の都道府県にも共有していく方針だ。