肥満と生産性には関係があるという調査が英国で発表されている。The Guardianの記事「Higher obesity levels linked to lower productivity in England, research shows」が、元政府特別アドバイザーが作成したレポートを紹介している。

このレポートは、2018年~19年、英政府の特別健康アドバイザーを務めたRichard Sloggett氏が中心となり、健康に関するポリシーを調べるFuture Health Research Centreが作成したもの。肥満が経済に与える影響を調べることを目的とした調査だ。

結論は「肥満や太り過ぎが多い地域は、生産性も低い」。「肥満は健康のみならず、経済面でも危険」としている。

バークシャー州スラウでは、一人当たりのGDPが6万3598ポンド(997万8500円)と、調査対象の地域では最も高い。では同地域における太り過ぎや肥満の割合はどうかというと、全体よりも低めの61.9%だった。一方で、一人当たりGDPが1万4906ポンド(233万8700円)と低いサウス・タインサイドは、太り過ぎや肥満の割合は65.9%と高めだ。

首都ロンドン以外で太り過ぎ・肥満の割合が高かった24の地方自治体はすべて、一人当たりGDPの平均値を下回っていたという。一人当たりGDPが最低レベルの10地域において、太り過ぎ・肥満の人が占める割合の平均値は69.4%だった。なお、このうち8地域はイングランド北部だという。

一方で、一人当たりのGDPが高い10地域では、太り過ぎ・肥満の割合は平均62.6%と約7ポイント少ないこともわかった。地域はというと、北部はマンチェスター州に1地域あるのみ、5地域を占めたのは南東のバークシャー州だった。

ロンドンを除いた地域で、太り過ぎ・肥満率が高い地域の一人当たりGDPは2万4214ポンド(379万9100円)、低い地域では3万3979ポンド(533万1300円)、なんと9765ポンド(153万円)の差があると報告している。

調査では、肥満と雇用の関係についても報告している。それによると、北東部のハートルプール、北部ミドルズブラ、北西部ブラックプールなどは肥満率、そして就労者が一人もいない世帯の両方で、上位20地域に入っているそうだ。

Sloggett氏は、この調査は「イングランドの各地域の肥満率と経済活動レベルとの間に相関関係があることを明確に示している」と述べているそうだ。イングランドの最も貧しい地域は、貧困状況が最も低い地域と比較して肥満率が1.5倍、肥満による入院者数についても3倍だという。そのようなことから、「肥満対策なしに経済成長やレベルアップの議論はできない」と述べているという。

Guardianによると、肥満は英国の国民保健サービス(NHS)に年間60億ポンド(約9413億5900万円)の支出を強いているとのこと。生産性が失われることによる英国経済への損失は、年270億ポンド(4兆2370億1770万5900円)と見積もられているそうだ。

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