1月25日~27日の3日間、東京ビッグサイトで、製造業に関わる技術に関する展示会「FACTORY INNOVATION Week 2023」が開催された。本稿では、その中の「グリーンファクトリーEXPO」において、1月26日に行われたサントリーホールディングスによる特別講演「いかにして工場のカーボンニュートラルを実施するか?~中小から大手事例まで~」についてレポートする。

講演には、サントリーホールディングス 執行役員 サステナビリティ経営推進本部 副本部長の風間茂明氏が登壇し、「サントリーグループの脱炭素戦略と取り組み事例」というテーマで語った。

サントリーが取り組むサステナビリティに関する7つのテーマ

サントリーグループは、水や農作物など自然の恵みに支えられた総合酒類食品企業として「水と生きる」という言葉をステークホルダーとの約束に掲げ、人と自然が響き合う社会の実現のために、さまざまな環境問題への取り組みを行っている。

主にサントリーグループが取り組んでいるサステナビリティに関するテーマは、「水」「CO2」「原料」「容器・包装」「健康」「人権」「生活文化」の7つだ。今回の講演では「CO2」の部分をメインテーマとして、環境問題への取り組み内容が語られた。

「サントリーグループでは、温室効果ガス削減目標として、2050年までにバリューチェーン全体で、GHG(温室効果ガス)排出の実質ゼロを目指す『環境ビジョン2050』と、自社拠点でのGHG排出量を50%削減し、またバリューチェーン全体におけるGHG排出量を30%削減することを目指す『環境目標2030』を設定し取り組みを加速させております」(風間氏)

  • サントリーグループのサステナビリティの取り組みを語る、サントリーホールディングス 執行役員 サステナビリティ経営推進本部 副本部長の風間茂明氏

サントリーグループは、環境目標2030の達成に向けて、2022年までに日本・米州・欧州の自社生産研究拠点の購入電力を100%再生可能エネルギーに切り替えることを完了させている。

また2021年5月には、再生可能エネルギー発電設備やバイオマス燃料を用いたボイラーの導入、再生可能エネルギー由来電力の調達などにより、CO2排出量実質ゼロを実現した新工場「サントリー天然水|北アルプス信濃の森工場」(長野県大町市)の稼働をスタートさせるなど、2030年に向けて着々と取り組みが進んでいるようだ。

  • CO2排出量実質ゼロの新工場「サントリー天然水|北アルプス信濃の森工場」のイメージ

人と自然が互いに良い影響を与え合える社会の創造のために

「サントリーグループは、Scope1(直接排出量)・Scope 2(間接排出量)の削減に向けて、技術課題の全体俯瞰を行っています」(風間氏)

サントリーグループでは、非化石由来燃料の比率を向上するため、「自然エネルギー」「バイオマス燃料」「エネルギー効率利用」「3Rの徹底」「新たなエネルギーの探索」といった5つの化石燃料利用を極小化させる取り組みを行っているという。

「自然エネルギー」に関する取り組みでは、太陽光発電などの再生可能エネルギーの利用の事例として、工場の屋根に太陽光パネルを設置している天然水南アルプス白州工場やスペインのカルカヘンテ工場などの取り組みが紹介された。

また「新しいエネルギーの探索」の取り組みでは、グリーン水素を製造する国内最大規模の余剰電力を気体燃料に変換(気体変換)して貯蔵・利用する方法であるP2G(Power to Gas)をサントリー天然水 南アルプス白州工場およびサントリー白州蒸溜所に2025年までに導入予定であることが紹介された。この16メガワットのP2G設備をフル稼働した場合、水素は年間2,200トン製造可能だといい、燃料として利用することでCO2は約1万6,000トンの削減を期待できるという。

また、Scope3(その他の排出量)については、「ザ・プレミアム・モルツCO2削減缶」として世界初のリサイクルアルミを100%使用した缶で通常の缶よりもCO2排出量を60%削減した事例や球磨地域農業協同組合(JAくま)と協働し、JAくまの茶葉製造工程において環境に配慮したプロセスを導入することによってCO2の排出量を約30%削減した事例などが紹介された。

講演の最後に風間氏は、顧客や地域社会、自然環境とサントリーグループが交わす約束である「水と生きる」という言葉を改めて述べた上で以下のように締めくくった。

「これからもサントリーグループは、人々の生活を潤い豊かにすることと自然環境を守り育むことが共存し、人と自然が互いに良い影響を与え合って長く持続していく社会の創造を目指してまいります」(風間氏)