NTT東日本、NTT、オリィ研究所は1月17日、オリィ研究所が運営する障がいや病気で外出が困難な人が分身ロボットを操作して接客を行う「分身ロボットカフェDAWN ver.β」常設実験店で活用されている分身ロボット「OriHime-D」において、NTT東日本が提供する大容量かつ低遅延な無線アクセス環境であるローカル5Gと、NTTが開発した無線アクセス環境も含めた端末同士の通信品質を制御する技術を組み合わせることで、遠隔地の操作者が通信遅延によるタイムラグを感じないナチュラルな遠隔ロボット操作を実現したと発表した。

分身ロボットはカフェ内に整備されたWi-Fiによって無線接続されているものの、Wi-Fiはアンライセンスバンドの無線周波数を用いていることもあり、外部の電波との干渉などによる無線通信品質の低下が発生しやすく、タイムラグや通信断による操作の中断により、操作者のストレス増大や操作精度の低下、カフェでのサービスに支障が生じる問題があったという。

そのため、カフェでナチュラルなロボット操作を実現するためには、外部の電波などの影響を受けにくい無線アクセス環境の整備、および無線通信区間も含めた分身ロボット-操作者間での通信遅延量を低減する必要があるという課題が存在していた。

それらの課題を解決するため、実証実験では外部電波などの影響を受けにくく高品質な無線アクセス環境であるローカル5Gをカフェ内に構築し、NTTが開発した通信品質を制御する技術を組み合わせて、遠隔ロボット操作に関する実証実験を行った。

実証実験では、NTT武蔵野研究開発センタ、NTT中央研修センタ、分身ロボットカフェDAWN ver.βを全長100kmの光ファイバーで接続し、カフェ内に整備したローカル5Gを経由して、武蔵野研究開発センタ内から障がいのある操作者がカフェのサービススタッフ業務を行った際のロボット操作感、およびアプリケーション間でのネットワーク性能評価を行った。

  • 実証実験の構成

ローカル5Gを活用することで、従来のWi-Fiを用いて分身ロボットを操作していた際に発生していた、無線通信の接続が途中で切断される事象や、映像品質の劣化による遠隔操作のし辛さは解消され、分身ロボットの操作性向上効果が確認できたという。

また、数十ms以上の遅延量増加が発生する大容量のダミートラフィックをローカル5Gへ付加した条件においても、NTTが開発した通信品質制御技術を分身ロボットに関わる通信(映像、音声、ロボット制御信号)に適用することで、付加されたダミートラフィックの影響を受けることのない低遅延の性能を維持可能なことが確認できている。

同実証実験の結果により、OriHime-Dをはじめとする分身ロボットの適用領域の拡大、および低遅延アプリケーションによるナチュラルなコミュニケーションが期待でき、障がいや病気などの理由で外出困難な人々の雇用と活躍の場の拡大や、場所にとらわれない新たな働き方の促進が見込まれるという。