ネット業界では現在、14万人のフォロワーを持つ海外のTikTokユーザーが仮想誘拐詐欺の被害について告白したことが話題になっている。このユーザーは誘拐犯からの電話で母親の声を聞いたというが、実は、これはフェイクであり、その後すぐに母親が無事であったことが分かったという。 Malwarebytesは12月16日、「Virtual kidnapping scam strikes again. Spot the signs」において、このような仮想誘拐詐欺で使われる手口について紹介した上で、被害を防止するためのヒントを提示している。
仮想誘拐詐欺(偽装誘拐詐欺とも呼ばれる)は、子供や親戚の誘拐を装って電話で金銭をだまし取る詐欺の手口である。実際には誘拐は行われないが、詐欺犯は被害者が電話口でパニックに陥っている間に電信送金やオンライン送金サービスなどを介して振り込みを行わせる。今回報告されたケースでは、詐欺犯はVenmoまたはCashAppを介して1,000米ドルを送金することを要求したものの、被害者のユーザーは 100ドルしか送金することができなかった。
被害者は電話口で母親の声を聞いたものの、途中で受話器を奪い取られたかのように声がフェードアウトしていったという。Malwarebytesは、これは詐欺犯がよく使う手口であり、被害者をパニックに陥らせて短時間で金銭を得ようとするための演出の一つと指摘している。
より手の込んだ手口としては、事前に電話会社やネットワーク会社を装って、(仮想的な)誘拐の被害者に対して電話の電源を数時間オフにするように要求することなどがあるという。これによって、詐欺犯から電話を受けた被害者が、すぐに本人の無事を確認することが難しくなる。振り込め詐欺でもよく使われる手口の一つだ。
実は、このような仮想誘拐詐欺は特に目新しいものではなく、FBIなども過去複数回にわたって警告を行っている。例えば2022年3月にはFBIシカゴが次のような警告を発令している。
FBIの警告では、仮想誘拐詐欺の被害を未然に防ぐために次のような対策を取るように提案している。
- 旅行の日付と場所をオンラインに投稿しない
- 旅行の前に家族と仮想誘拐について話し合っておく
- 家族が実際に何らかの深刻な危険にさらされていることを確認できるように、緊急時に使用する「パスワード」を用意しておく
- 電話で見知らぬ相手に財務に関する情報を提供しない
上記に加えて、Malwarebytesは、必要に応じてオンラインから自身の場所や名前、電話番号に関する情報を削除することも提案している。また、FBIの警告では仮想誘拐詐欺の身代金は電信送金サービスでのみ受け付けられると記されているが、今回のTikTokユーザーのように、最近ではオンライン送金サービスも多用されるため注意が必要だ。
このような仮想誘拐詐欺は、子供の学校が休みに入る時期に増える傾向にある。冬休み期間に入る前にいま一度気を引き締め直したい。