ガートナージャパンは12月13日、14日、「ガートナー ITインフラストラクチャ、オペレーション & クラウド戦略コンファレンス」を開催した。「破壊的テクノロジと未来志向のトレンド」「新たなインフラ設計とクラウド戦略」「ITオペレーションと自動化」「テクノロジ人材、組織、リーダーシップ」「デジタル・ワークプレースとUX」という5つのトラックが用意された同カンファレンスには、海外アナリストも多数登壇。日本のITリーダーが知っておくべき技術トレンドの解説のほか、ゲストスピーカーによる事例紹介なども行われた。
その中から本稿では、ガートナージャパン バイス プレジデント、アナリスト 鈴木雅喜氏による講演「Web3は未来を変えるのか:日本のITリーダーが知っておくべきこと」の内容をレポートする。
非中央集権化とデジタルトークンが鍵に
冒頭、鈴木氏はWeb3について将来の社会と企業のビジネスを大きく変える可能性があることを強調した上で、「一気に変わるのではなく、ある時気が付いてみたら、皆さんが普通に使っているという風になる」と見解を示した。同氏によると、Web3のキーワードは「非中央集権化」と「デジタルトークン」だという。これらを説明するにあたり、Web3と切っても切れない関係となる技術が、ブロックチェーンである。現在よく耳にするWeb3やDAO(分散型自律組織)、トークンといったものはそれぞれ全く別の概念ではなく、「基本的に全てブロックチェーンの基本特性の上で動いているもの」(鈴木氏)だからだ。
では、ブロックチェーンの基本特性とは何か。
鈴木氏はここでブロックチェーンを「高機能・分散型・仮想大福帳」だと説明する。大福帳とは江戸時代に用いられた帳簿である。つまり、ブロックチェーン上で各人が大福帳(帳簿)を所持しており、これにトークンの取引を書き込むと、各々が所持している大福帳も更新されるイメージだ。ブロックチェーン上には「胴元がいない(=非中央集権化)」ため、この取引はシステムの仕組みの中で認証される。そして次の取引情報が書き込まれた際、1つ前の情報は引き継がれ、改ざんはできない。
また、ブロックチェーンの根底にトークンの交換の仕組みが備わっている点もポイントだという。代表的なブロックチェーンの事例としては、国際送金や貿易取引、デジタル通貨、仮想通貨などが挙げられる。
日本企業がブロックチェーンに取り組むには何が必要か
では、日本企業においてブロックチェーンへの取り組みは加速しているのだろうか。ガートナーの調査では、おおよそ過半数の企業が何らかの取り組みをしているという結果が得られているが、2021年と2022年の調査結果を比較すると、取り組み企業数は減少していると鈴木氏は指摘する。
「ブロックチェーンは戦略的に考えるべきテクノロジーであり、目の前のものがすぐに大きく変わるわけではありません。しかし数年後を見据え、きちんと理解しておく、社内の経営層やステークホルダーに理解してもらっておくことが重要になります」(鈴木氏)
さらに鈴木氏は、ブロックチェーンに関しては大企業とスタートアップ企業による取り組みが増えていることを挙げ、従来取引のある企業だけでなく、新たな企業にも目を向けることを提案。また、IT部門側がブロックチェーンを活用した取り組みを行うにあたっては、事業部門側がどのように考えているのかを常に念頭に置いて進めることを推奨した。