NTTコミュニケーションズ(NTT Com)は12月9日、NTTドコモ、NTT Com、NTTコムウェアの法人事業を統合した新ドコモグループの「ドコモビジネス」のドローン事業の概要を説明するとともに、同社が提供するドローンのデモ飛行を行った。

同社は2016年からドローンビジネスを開始。現在、「docomo sky」というブランドでビジネスを展開し、ドローン機体の提供、「docomo sky Cloud」というプラットフォームの提供、飛行中のドローンをLTEでコントロールを行う「LTE上空利用プラン」提供の3つを行っている。

  • 「docomo sky」ビジネス

5G&IoTサービス部 ドローンサービス部門長 柏 大氏は、「ドローンビジネスはこれから広がっていくので、パートナーと一緒に、協創やオープンをキーワードに業界全体を盛り上げていきたい」と語った。

  • NTTコミュニケーションズ 5G&IoTサービス部 ドローンサービス部門長 柏 大氏

現在、同社のソリューションとしては、インフラ点検、巡回、農業、物流、災害対策、セキュアドローンの6つの領域があるが、インフラ点検、巡回、農業の3つについてはすでに商用利用を開始しているが、他の3つについては実証実験の段階。

  • 提供する6つのソリューション

インフラ点検では、障害物回避機能を実装したSkydio社のドローンを使った鉄塔や橋梁(首都高)の点検行っている。鉄塔はドコモの基地局の点検を行っており、年間1000ほどの実績があるという。橋梁の点検では、3Dスキャン機能を使ったモデリングを利用している。

  • インフラ点検

  • インフラ点検のデモ

  • 3Dスキャン機能を使ったモデリング

巡回は、毎週など一定間隔で点検するもので、倉庫内の異常検知や建築現場での進捗確認などで利用されているという。格納庫から自動で飛行を開始し、終了後、自動で格納庫に戻って充電を自動で行うという、人手を介さないオートメーションの部分に力をいれているという。

  • 巡回

  • 巡回用ドローン「Skydio」

  • 巡回では、格納庫から自動で飛び立ち、自動で戻り、自動的に充電される

農業では、病害検知や生育確認、農薬散布などに利用されている。雑草が多い部分に重点的に農薬を散布するといったことやトラクターとの連携も実践されているという。

  • 農業

  • 農薬散布のデモ

物流は、山間部に薬品を届けるなど、配送用途でSIMカードやLTE端末が搭載できるセルラードローンを活用。レベル4の恩恵を一番受けやすい用途だという。また、柏氏は「LTE上空利用プラン」やGNSS位置情報サービスが重要な役割を果たすと語った。沖縄の実証実験では、40km程度の飛行を行ったという。

  • 物流

  • 12月9日に提供を開始した「LTE上空利用プラン」が利用できるセルラードローン(ANAFI-Ai)

「LTE上空利用プラン」については、基地局側に手を入れ、電波の強弱をコントロールしており、ドローン側を変更することなく利用できる点は、他のキャリアに対する優位点だと柏氏は語った。

  • 約40km離れたところにあるドローンを「LTE上空利用プラン」で操作するデモ

災害対策は、消防や自治体向けのサービスで、災害が発生した場合の現地確認などを想定している。

セキュアドローンは、政府や自治体向けのサービスで、撮影したデータの暗号化サービスを提供する。また、同社は同日、ドローン運用に役立つフライト計画の作成や機体に関する情報管理などの機能を提供するクラウドサービス「セキュアフライトマネジメントクラウド」において、機体と操作機器間を閉域網で接続し安全なフライトを実現する「閉域網プラン」を開始した。

  • 暗号化が行えるドローン「蒼天(SOTEN)」

これは、通信経路の一部に不特定多数の利用者がアクセス可能なインターネットが含まれる場合、悪意を持った第三者による機体と操作機器間の通信傍受や乗っ取りなどのセキュリティリスクが懸念されるため、機体と操作機器間を特定の利用者のみアクセス可能な閉域網で接続し、レベル4飛行などに最適な安全なフライトを実現するもの。ACSLのドローン「SOTEN(蒼天)」と操作機器間の閉域網での通信を実現する。

柏氏は、実証実験の3つの用途における課題として、人が住むエリアを飛行にすることに対する社会の理解と、複数のドローンが飛行することを想定した航空管制の2つを挙げた。

また、2022年12月5日の改正航空法でレベル4飛行が解禁され、有人地帯で補助者なしでの目視外飛行が可能になったが、これについて柏氏は、「docomo sky Cloudが、生活を変える、産業のDXを進める上でのキーになる。これまのWi-Fi中心から、LTE、モバイルネットワークを使って、広範に遠距離でドローンが飛べるようになる。これは、世の中が大きく変わっていくチャンスだ。そのためにしっかりと実績を積んでいきたい」と述べた。

同社はレベル4に向けては、LTE上空利用プランや数センチ誤差で機体をコントロールできるGNSS位置情報サービスを提供する。

  • レベル4に向けたNTT Comの取り組み