変化の激しい小売業で創業58年のニトリが躍進している。2022年は35期連続増収増益を達成、2032年には3000店舗・売上高3兆円を目指す。その達成のためにはITは欠かせない。内製化で作ってきたIT戦略を拡大させ、分析についても内製化で人材育成、基盤の再構築を進める。

11月10日、11日に開催された「TECH+ EXPO 2022 Winter for データ活用 戦略的な意思決定を導く」に、ニトリホールディングス 上席執行役員 CIOで、ニトリデジタルベース 代表取締役社長の佐藤昌久氏が登壇。ニトリにおけるデータ分析の取り組みについて話した。

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ITを含め全て内製化する“製造物流IT小売業”

似鳥家具店として1967年に創業し、町の家具屋から全国、さらには世界へ展開を広げたニトリ。2022年の売上高は8110億円を超え、日本に708店舗、中国など国外にも93店舗を構えている。購入経験がある顧客数は1億4600万人、アプリ会員数は1314万人を数え、年間配送件数は275万件を誇る。

同社のCIOを務める佐藤氏は、実はIT部門への採用でニトリに入社したのではないという。入社2年目で情報システム室の立ち上げに関わったが、「みんな素人。勉強しながら情報システム室を作っていった」と、当時を振り返る。

内製するのはIT部門だけではない。ニトリでは市場調査、原材料調達、製造、品質検査、貿易、輸入、物流、広告宣伝など全てのプロセスを自社で行っていることから、「製造物流IT小売業」だと、自社のビジネスを形容する。

  • ニトリの「製造物流IT小売業」のイメージ図

ニトリは、2003年から2032年までの間に売上高3兆円の達成を目指し、“「世界の暮らし」提案企業へ”というビジョンを掲げている。

ITは、このビジョンを支える重要な要素に位置付けられる。具体的に柱となるのは「最新のITシステム」「グローバルSCM」「社内外データ活用、AI」の3つだ。

一般に、DXを推進する場合、デジタイゼーション、デジタライゼーション、そしてデジタルトランスフォーメーションというステップを経ることになる。「それぞれの段階で、デジタルの力やその時点で最善・最新の技術を使い、業務をデジタルにより変えていく。その意味で言えば、(ニトリの)DXは今始まったものではなく、20年前から取り組み新しいシステムを作ってきた」と佐藤氏。「変える・変わることができる能力を会社が持つこと、つまり内製化志向のIT組織をしっかりとした形で構築する。それが弊社にとってのDXという位置付けで取り組んでいる」と続けた。

データ分析からデータドリブンへ

講演のメインとなるのが、ニトリのデータ分析への取り組みだ。

同社は10年以上前から会員情報と紐付いたPOSデータを所有しており、売上と顧客数を全社員で分析できるシステムを整えている。一方で、課題もある。「基本は構造化データで、店舗やECの購買と顧客のオンライン行動データが有機的につながっていない」と佐藤氏は指摘する。また、2020年より画像認識、文字認識、音声認識、文章解析などのAIのトライアルを進め、業務に組み込みながら活用しているが、「単発的な活動に留まっている」と、課題を明かした。

そこで、現在取り組むのが「データドリブン」だ。過去データから分析する「事後対策」から、過去データから将来を予測して効率化やコスト削減を図る「事前対策」へと変え、セグメント化により顧客ごとに視点を変えることで良質なサービスを提供し、「数表から理解できる範囲での分析」から「統計学や機械学習の適用による予測やパターン化」へと進めていく。

具体的には、以下の3つが取り組みの柱になる。

  • ・分析人材の育成
  • ・IT基盤の再構築
  • ・具体的な課題設定と継続的な成果創出