今後、少子高齢化に伴う労働人口の減少、働き手不足が予想されている日本において、企業はいかに人材を確保するかに苦心している。一方で、省人化というかたちで、この問題に解決策を提示する企業もある。それが、無人決済システムを展開するTOUCH TO GO だ。
11月10日、11日に開催された「TECH+ EXPO 2022 Winter for データ活用 戦略的な意思決定を導く」に、同社 代表取締役社長で、JR東日本スタートアップ マネージャーの阿久津智紀氏が登壇。「無人決済システムで実現する店舗DX」と題して、「TTG-SENSE」や「TTG-SENSE MICRO」、「TTG-MONSTAR」といった無人AI決済店舗システムがいかに省人化を実現するのか、その仕組みについて解説した。
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省人化し、素早い買い物も実現する無人決済システム
TOUCH TO GO(以下、TTG)はJR東日本が実施する「スタートアッププログラム」への応募をきっかけに、省人化・省力化システムソリューションを開発する企業として2019年に設立。2020年に、高輪ゲートウェイに無人決済の直営店をオープンしている。
阿久津氏は講演冒頭、ウォークスルー型の完全無人決済店舗・TTG-SENSEの仕組みを紹介する動画を披露した。来店者の動きを捉えるセンサーカメラと商品棚のセンサーによって、来店者が商品を取ったり戻したりといった動きをリアルタイムに把握。併せて天井のカメラが店内を3Dで捉え、商品とそれに購入する来店者を把握できるのが技術的な特徴だという。
決済時、レジの操作が分からない顧客の対応など、接客の部分はコールセンターから遠隔で行う。また、アルコール類やタバコなどの年齢確認商品についても、バックヤードのスタッフがリモートでカメラによる顔認証を行う仕組みになっている。さらに複数人での来店時には、それぞれが別々に手に取った商品をまとめて会計することも可能にした。
会計処理の際は、レジの前に人が立つだけで何も操作しなくても決済確認画面に明細が表示される。一般的なセルフレジとは異なり、客がバーコードをスキャンする必要もないので、会計の時間も大幅に短縮が可能だ。支払方法としては、カードや電子マネーだけでなく現金にも対応する。阿久津氏は「キャッシュレス化の流れには逆行するが、小売業、飲食業にとっては売上を作っていくことが重要」だとし、幅広い支払方法に対応することで売上を最大化できると語った。
狙うのは自販機とコンビニの間のマイクロマーケット
阿久津氏はこの取り組みの特徴として、ITアルゴリズムの構成からデバイス開発まで、最短距離でモノづくりをしていることを挙げ、物流や導入も含めたオペレーションを熟知した上で最先端のIT技術、デバイス開発力を活かして、「最適な省人化を実現していることがTTGの強みである」と述べる。
では、そんなTTGはどのようなマーケットを狙っているのだろうか。
TTGが今、最も力を入れて取り組んでいるのは、“新しいマーケット”を作ることだという。日販2000~3000円の飲料の自動販売機と、日販50万円のコンビニの間にはギャップがあり、両者の間に「日販数十万円のマーケットがあるはずだ」と言う。そういった「マイクロマーケット」こそが、TTGが狙っている新たなマーケットだ。同氏はさらに「TTGは人件費を削減することで店舗の採算性を高められるので、出店の可能性を広げていくことができる」と付け加えた。
ただし、新たな店舗に人員を配置してしまうと採算性が低下する。そのため、既存店から商品を配送する、設置先にメンテナンスを委託するといったかたちを採ることで、手間を増やさずにサテライト店舗として運用ができる仕組みを現在構築しているところだという。