NECは11月30日、「NEC Innovation Day」を開催して、同社の研究開発や新規事業創出における今後の戦略を発表した。同日には、展示スペースにて研究開発段階のサービスや技術のデモが展示された。
本記事では、参考出展されていた骨格推定技術を応用したヘルスケアサービスと、AIを活用してITリソースの自動割り当てを行う技術を紹介する。
前屈動作と問診でAIが運動メニューを提案
NECでは、個人の心身の状態に合わせて、体調不良の根本原因の推定や改善案の提案、けがや病気の予防まで行える技術水準のケアサービスを提供する「パーソナルアシストサービス」の開発を進めている。
展示スペースには一例として、東京医科歯科大学と共同研究・開発を進める「AIによる骨格推定技術などを体のケアに応用したサービス」のデモが展示されていた。
同サービスでは、理学療法士の知見・技術レベルでAIが身体の状態認識を行い、体の不調な部位の原因推定や、不調を改善するための運動メニューの提案が可能だという。
筆者がデモを体験してみたので、その様子を紹介する。
まずは、スマートフォンで立位(立った状態)での前屈動作の動画を撮影する。動画を基にAIが動作の特徴を認識し、骨格推定技術によって背中の曲がり具合や関節の角度などが分析され、数秒で体の部位ごとに正常に動作している箇所や不調な箇所が、診断結果画面の右上に色分けして表示された。
青い部分が正常に動作している部分で「正常屈曲」(膝関節は屈曲なし)と表現される。緑色の部分が本来曲がるべき角度よりも曲がりすぎている「過屈曲」、赤色の部分が本来曲がるべき角度まで動作できていない「屈曲不足」となる。
診断結果では、身体のパーツごとの状況まで診ることができる。筆者の場合は、「全体としては床に手が付いていて良いが、骨盤から腰椎のつなぎ目にあたる腰椎仙骨移行部での動きが悪く、そこをカバーするように下部胸椎と股関節が曲がり過ぎている」という結果だった。
その後は、痛みのある部位やどんな動作で痛みがあるか、BMI値や仕事内容などの問診情報を加えることで、不調がどのような原因で引き起こされているかの分析結果が示された。
最終的には、腰まわりの伸びの動きに課題があるとAIが判断し、不調を改善するための運動メニューとして、「ペルビッククランチ」「ヒップリフト」「キャット&ドッグ」などが提案された。
骨格推定では、カメラで人体を撮影する際に角度や高さなどの細かな調整が必要となるが、同サービスではスマホのレンズに人の全体が映っていれば骨格推定が可能だという。
展示ブースでは、NEC バイオメトリクス研究所 主任研究員の小阪勇気氏が、「理学療法士の専門性をAI化することで、コストを抑えたヘルスケアサービスを提供できないかと考えた」とサービス開発のきっかけを教えてくれた。