HQ-25Mの合計得点と3つの下位尺度の得点の群間差を検討するため、被験者間の1要因分散分析が実施された。「ひきこもり群」は、「非ひきこもり群」および「ひきこもり予備群」と比較して、すべての得点で有意に高いスコアだった。下位尺度では「孤立」の因子において、「ひきこもり予備群」の方が「非ひきこもり群」と比べて有意な高値が認められたという。

  • 参加者のひきこもり期間の度数分布

    参加者のひきこもり期間の度数分布 (出所:九大プレスリリースPDF)

今回の調査では、HQ-25Mに加えて、過去1か月間の心理的苦痛を測る「K10」という尺度も同時に実施された。HQ-25MとK10の得点の関係が検討されたところ、有意な正の相関が認められたとする。

  • 記述統計量とCronbachのα、HQ-25M得点のω、HQ-25M得点とひきこもり期間およびK10との相関係数

    記述統計量とCronbachのα、HQ-25M得点のω、HQ-25M得点とひきこもり期間およびK10との相関係数 (出所:九大プレスリリースPDF)

今回の研究により、1か月版ひきこもり度評価尺度HQ-25Mは、ひきこもり期間や心理的苦痛の強さと有意な正の相関があり、ひきこもりの早期発見を支援するツールとしての予備的な妥当性の検証に成功した形であるが、オンライン調査に基づいたものであり、ひきこもり評価に際しては最新の「病的ひきこもり」の国際診断基準が用いられておらず、未就労の日本人男性に対象が限られているなど、いくつかの限界があるという。そのため、今後はこうした限界を補い、日本に加えて海外の現場において、女性や、より重症のひきこもり者を含めた対象に対してHQ-25Mを実施することで、さらなる妥当性の検証を行う予定と研究チームでは説明している。

また、コロナ禍・ポストコロナの時代、世界中でひきこもり者の急増が懸念されていることから、今回の自記式質問票HQ-25Mが職場や学校などで広く活用されることで、ひきこもりリスクの高い人たちの早期発見が実現され、病的なひきこもりに至ることを予防するための重要なツールとなることが期待されるともしている。

HQ-25Mは、九大の今回の研究発表を記したPDFの最終ページにも掲載されているので、誰でも利用することが可能となっている。