宇宙航空研究開発機構(JAXA)は11月28日、30年にわたって運用されてきたJAXAの現役最古参の衛星である磁気圏尾部観測衛星「GEOTAIL(ジオテイル)」が、2022年6月末時点で搭載データレコーダーが両系とも動作を停止して十分な観測データを取得できなくなったことから、観測運用を終了することを決定し、2022年11月28日に同衛星の運用停止・停波を行ったことを発表した。
「GEOTAIL」は、JAXAが現在運用している衛星や探査機の中で、唯一1990年代に打上げられた衛星。1990年代ということは、まだJAXAの発足前のことになる。このGEOTAILが運用を停止したことで、JAXA発足前に打ち上げられた衛星・探査機はすべて運用停止となり、新たな現役最古参は2005年打ち上げの小型高機能科学衛星「れいめい」へと代わることとなる。
GEOTAILの開発と当初の運用は、JAXAの母体の1つであり、東京大学 宇宙航空研究所にルーツを持つ宇宙科学研究所(ISAS、現在はJAXAの1部門として活動中)が担当。そして同機関とNASAの日米共同プロジェクトとして、1992年7月24日に米国フロリダ州ケープカナベラルからデルタ-IIロケットで打ち上げられた。そして2003年10月以降は、日本の航空宇宙系の3機関が統合されたことから、JAXAが運用を行ってきた。
GEOTAILは観測機器もISASとNASAで分担しており、受け持ちは、ISASが約3分の2、NASAが約3分の1となっている。観測機器の種類は、磁場、電場、プラズマ(2組)、高エネルギー粒子(2組)、プラズマ波動の5種類で、地球半径の約8倍から約220倍という広大な磁気圏をカバーできる軌道に投入され、これらの機器を駆使して長らく観測を行ってきたのである。
観測の目的は、「磁気圏尾部ではどのように磁場のエネルギーが変換され、イオンや電子の加速が行われているか?」、「磁気圏尾部に存在する多様な波動はどう関わっているか?」、「磁気圏尾部のプラズマはどのような起源を持ち、どのように輸送されているか?」といった謎を解く手がかりを得ることだった。
地球磁気圏は太陽風に押されて歪んでおり、反対側(夜側)に伸びて長大な尻尾の形となる。この「磁気圏の尾部」には太陽から得られたエネルギーが蓄えられ、オーロラやヴァン・アレン帯(放射線帯)のエネルギーのもととなる。この磁気圏尾部の探査は天文物理学や宇宙科学の一環として意義深いものであり、地球(GEO)磁気圏の尾部(TAIL)を探る衛星ということから「GEOTAIL」と命名された。
この30年に及ぶ地球周回の長楕円軌道での観測により、「GEOTAIL」は地球磁気圏の昼間側境界や尾部で磁気リコネクション(磁気のつなぎ替え)が起きていることを実証。中でも、イオンや電子がどのように振る舞うのかを明らかにするなど、磁気圏尾部において数々の発見を含む画期的な成果を上げてきた。
今回、「GEOTAIL」は運用停止となったが、JAXAでは2023年3月末までにミッション成果のまとめを行うとしている。