Googleは11月24日、オンラインで日本国内における最新の旅行行動と意識の変化に関する説明会を開いた。
グーグル ビジネスインテリジェンス担当 アナリティカルコンサルタントの中島美月氏は「観光庁によると、2019年まで日本人の旅行は増加傾向だったが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い急落した。しかし、2021年には生活を平常を取り戻そうとする動きがあり、暮らしの自由度や消費意欲も落ち着きを取り戻しつつある。こうした中、現在における日本人の旅行に対する意識について理解を深めるために人々の旅行意欲と情報行動の特徴を探る調査を行った」と、調査の背景を説明した。
調査は、インタビューによる定性調査とWebアンケートを活用した定量調査の2つの手法で行い、定性調査は有識者と生活者それぞれにインタビューを実施し、旅行のマクロトレンドと具体的な旅行の事例を掛け合わせて旅行に関する仮説を立てた。
定量調査では、定性調査の仮説をもとに全国18~75歳の男女(約3万人)を市場全体と見なして市場向上を把握する全体調査に加え、本調査として今後1年間の旅行意向者(4532人)に絞り旅行意識について深堀した。
結果として、旅行の経験・意向に関して国内旅行は過去1年間の旅行経験が49.2%だったが、今後1年間の旅行意向は76.9%、海外旅行では3.1%から32%にそれぞれ増加しており、人々の旅行意欲が急速に高まっていることが判明した。
中島氏は「費用面について尋ねたところ、国内旅行は1人当たりで平均5.1万円、海外旅行は同16.2万円となり、旅行頻度と掛け合わせて旅行市場規模を拡大推定すると国内旅行は12.6兆円、海外旅行では11兆円にのぼる」と説明した。
特に国内旅行の形態として「1人旅」と「友人・知人との旅行」への意向が増加し、過去の経験ベースと比較するといずれも2倍に増加。1人旅は年代を問わず全世代にわたり需要があるという。
その要因として、同氏は「コロナ禍での他者との交流状況に特徴がある。1人旅の意向者は家族や友人、職場の人たちとの交流に関して平均との大きな差はなかった一方で、1人きりで過ごす時間が増加した割合が高い。つまり、1人時間を前向きにとらえて1人旅行の良さを見出している。その半面、友人・知人との旅行意向者も1人で過ごす時間が増えた割合が高かったことに加え、友人・知人との交流時間が減少したと回答する割合も56.5%と平均を大きく上回った」と話す。
一方、情報行動の特徴として、詳しい内容が書かれたテキスト情報が64.7%、直感的に見れる画像が71.5%とともに高い割合を示している。両方を参考している年代により、それぞれの割合に大きな差異はないという。
また、旅行に対するアイデアは、すぐに活用するのではなく、場所の画像などをストックしてから活用すると回答した割合が52.1%に達し、約半数を占めている。
参考にしている情報源としては「ネット検索」が1位となり、次いで「地上波のテレビ番組」、3位は「旅行予約サイト」となる。年齢別では、特に若年層でSNSやYouTube、オンラインマップなど、直感的に分かりやすいビジュアル情報が旅行アイデアを収集する目的で活発に利用されている。
旅行に関する三大トピックは「観光」(12.8%)、「ホテル・宿」(11.7%)、「グルメ」(10.7%)の順となり、SNSやYouTubeが旅行情報の収集に活用されている要因として、これらのトピックと相性が良いことが考えられるという。
さらに、1人旅、友人・知人との旅行の意向者が参考にする情報源の特徴として1人旅はネット検索、YouTubeの動画、オンラインマップが高い傾向となり、友人・知人との旅行では家族・友人・知人からの口コミ、SNSが全体を上回る形となった。
加えて、旅行アクティビティが全体的に増加し、特に「温泉」や「食べ歩き」など、従来的な楽しみ方が一層増加していくという。中島氏が着目したのが「体験系」のアクティビティも今後1年間で45.8%(過去1年間は22.2%)となることから、増加が期待されている。
実際に、2019年と比較して、2022年の検索量が増えている体験例(2022年9月)の上位5つは「陶芸」「カヌー」「座禅」「気球」「ガラス細工」となっている。
中島氏は「屋内外で新たな体験を楽しみたいと感じているようだ」と述べていた。