国立がん研究センター(国がん)、国立精神・神経医療研究センター(NCNP)、国立高度専門医療研究センター医療研究連携推進本部(JH)の3者は11月15日、1990年と2000年時点で食事調査アンケートに回答した長野県佐久保健所管内の南佐久郡8町村に在住の40~69歳の約1万000千人のうち、2014~15年に実施した「こころの検診」に参加した1204人のデータから、野菜・果物およびフラボノイドの豊富な果物の摂取とうつ病との関連を調べた結果、果物およびフラボノイドの豊富な果物の摂取量が多いほど、うつ病が発症するリスクが低いことがわかったと発表した。
今回の研究は「多目的コホートに基づくがん予防など健康の維持・増進に役立つエビデンスの構築に関する研究」による成果で、NCNP 精神保健研究所 行動医学研究部 精神機能研究室の成田瑞室長をはじめとする、国がん、NCNP、慶應大学などの研究者が参加した。詳細は、英科学誌「Nature」系の精神医学とそれに関連する分野を扱う学術誌「Translational Psychiatry」に掲載された。
うつ病を発症することで失われてしまう健康的な生活の年数は、循環器疾患と同程度とされ、個人にとっても国全体にとっても、負担の大きい心の病とされている。
うつ病の研究が進む中、これまでの研究でわかってきたのが、野菜や果物の摂取が、うつ病に予防的に働く可能性があるという点で、中でもポリフェノール化合物の一種であるフラボノイドは、脳由来神経栄養因子や酸化ストレスと神経炎症の抑制作用に対し、抗うつ効果を持つことが示唆されていたという。そこで研究チームは今回、野菜・果物およびフラボノイドの豊富な果物の摂取が、うつ病のリスク低下と関連するかどうかを調べることにしたという。
具体的には今回の調査は、まず1995年と2000年に行われた2回の食事調査アンケートから、野菜、果物およびフラボノイドの豊富な果物の摂取量の平均値が計算され、それぞれについて人数が均等になるように5グループに分け、摂取量が最も少ないグループを基準とした場合の、ほかのグループのうつ病発症リスクとの関連が調べられた。
また、野菜・果物に関連する栄養素として、α-カロテン、β-カロテン、ビタミンC、ビタミンE、葉酸の平均摂取量とうつ病との関連も検討された。解析時には、年齢、性別、雇用、飲酒、喫煙、運動習慣の影響を取り除くよう、統計学的な調整が行われた。