SDGsや環境問題への関心が急速に高まっている近年、「木材」は建築・食材(CNF)・繊維などのさまざまな分野で八面六臂の活躍をみせている。
一方で、木材を生産する林業に従事する人々においては、年々高齢化や人手不足が進んでいる。それに加えて、林業は人力作業が多く労働災害の危険性も高いため、作業現場での省力化や安全性確保といった課題の解決が求められてきた。
そこで今回は、森林研究・整備機構の森林総合研究所(森林総研)とソフトバンクが共同で行っている、電動四足歩行ロボットの実証実験について触れたいと思う。
林業現場で四足歩行ロボットの活用可能性を探る実証実験
2021年度から行われている同実証実験では、まず北海道下川町などにある造林地や急傾斜地などの過酷な環境下における電動四足歩行ロボットの歩行能力について調査・検討が行われた。その結果、一定の条件下であれば斜面や障害物などがあっても安定した歩行ができることが明らかになったという。
そして2022年度には、電動四足歩行ロボットが、造林地の巡回や監視、荷物の運搬などの作業を担えるかを検証する試験を実施し、作業が可能な地表面の凹凸や柔らかさ、傾斜などを明らかにするとしている。
また、造林地で設定したルートを自動で歩行する機能や、複数台のロボットで協調作業を行うためのシステムの開発に取り組む上、携帯電話の電波が届かない場所でもロボット運用ができるような通信手段および通信環境の構築なども行うなど、社会実装に向けた開発が進んでいる。
ソフトバンクは、同社の高精度測位サービス「ichimill(イチミル)」を自動歩行機能に活用するほか、通信事業者として持つ知見やノウハウを提供するという。なお、2022年度の実験は下川町および茨城県つくば市で計2回行われる予定で、ロボットは米国Boston Dynamicsの「Spot(スポット)」を利用するそうだ。
再造林を進めるためスマート林業の早期実現へ
現在、国内の人工林は約半分が伐採時期を迎え、木材の利用が拡大している一方、林業従事者の高齢化や担い手不足、少ない伐採収益のために、森林の再造林が進んでいないという問題に直面している。この状況は、森林の荒廃による災害増加やCO2の吸収量低下につながるという。
森林総研とソフトバンクは今後、ロボットをはじめとしたテクノロジーを駆使することで課題を解決し、スマート林業の早期実現を目指すとした。