米Oracleは今年、3年ぶりに、米国ラスベガスで年次イベント「Oracle CloudWorld 2022」を開催した。同イベントでは毎回、同社の主力製品に関する発表が数多く行われる。
そこで、日本オラクルは11月10日に説明会を開催し、同イベントで発表された、Oracle Cloud Infrastructure(OCI)とデータベースに関する注目のトピックを紹介した。
冒頭、常務執行役員 クラウド事業統括 竹爪慎治氏は、同イベントの印象について、次のように語った。
「これまでのイベントと比べ、工夫が凝らされていた。背景にブルーを使ったり、他社との協調をうたったりと、これまでとは変わった面が見られた。また今年は、CEOのサフラ・キャッツ、CTOのラリー・エリソン、 Oracle Cloud Infrastructure担当エグゼクティブ・バイスプレジデントのクレイ・マグマイク、Applications Development担当エグゼクティブ・バイスプレジデントのスティーブ・ミランダの4人が一貫した戦略の下で、基調講演を行っていた」(ラリー・エリソン氏は基調講演でクラウドの将来を予想、スティーブ・ミランダ氏は基調講演で「Applications Platform」を発表)
竹爪氏は、Oracle CloudWorld 2022において、Oracle Cloud Infrastructure(OCI)の進化が「堅牢堅固なクラウド基盤」「分散クラウド」「データ活用を促進する基盤」という3つの観点から発表が行われたと説明した。
堅牢堅固なクラウド基盤を実現する新機能
竹爪氏は、堅牢堅固なクラウド基盤を実現するための新機能の中で、注目すべきものとして「GPU Super Cluster」「Full Stack Disaster Recovery」「Zero Data Loss Recovery Appliance」を挙げた。
「GPU Super Cluster」の提供にあたって、NVIDIAとの協業拡大が発表され、キャッツ氏の基調講演にNVIDIA の創業者/CEO であるジェンスン・フアン氏が登壇した。
協業により、GPUからシステム、ソフトウェアに至るまで、NVIDIAアクセラレーテッド・コンピューティング・スタックをすべて「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」で利用可能にする。具体的には、OCIは、 A100 や今後発売予定のH100を含むNVIDIA GPUをさらに数万個追加する。
竹爪氏は、「OCIの強みはクラスタ・ネットワーキング。並列処理を実現するには、ノード間のネットワークがボトルネックにならないことが重要になってくる。その点で、OCIは一日の長があり、スパコンと比べても遜色ない性能が出せる」と説明した。
「Oracle Full Stack Disaster Recovery Service」は、クラウド環境上で包括的なディザスタ・リカバリ機能を提供するサービスだ。アプリケーション・スタック全体のDRを実現する。
「Oracle Database Zero Data Loss Autonomous Recovery Service」はクラウド用の完全に自動化されたデータベース・ネイティブのバックアップおよびリカバリで、今後提供が予定されている。オンプレではアプライアンスとして提供していたものをマネージドサービスとして提供する。
同サービスでは、自動化された暗号化と保存によりデータの盗難を防止しするとともに、リアルタイムでデータ損失を防ぐため、ランサムウェア対策としても有用だという。
分散クラウドを実現する新機能
竹爪氏は、同社が「マルチクラウド」「ハイブリッドクラウド」「パブリッククラウド」「専用クラウド」という4つのクラウドに対し、統一したアーキテクチャを提供すると説明した。同社は、同一のアーキテクチャの下、さまざまな方法や場所でクラウドを利用可能にするアプローチを「分散クラウド」と呼んでいるようだ。
分散クラウドに関する新たな発表としては、「Oracle Alloy」が紹介された。これは、オラクルのパートナー企業がクラウド・プロバイダーとなり、自社の顧客にOCI上で構築したクラウド・サービスを提供可能にするクラウド・インフラストラクチャ・プラットフォームだ。
竹爪氏は、「Oracle Alloy」について、「OCI Dedicated Regionから一歩踏み込んだソリューション。運用を外部に出し、パートナーがサービスの値段も決められる。今の日本のクラウド市場の動向を考えるとニーズが高いと見ているが、提供先は絞る」と語っていた。
データ活用を促進する基盤を実現する新機能
竹爪氏は、データ活用を促進する基盤のコア・テクノロジーとして「Oracle Database」と「Autonomous Database」を挙げた。今回、ロングタームリリースとなる「Oracle Database 23c」のベータ版がリリースされた。
「Oracle Database 23c」は、(App Simple)というキャッチが付けられている通り、アプリケーションと開発の簡素化に重点が置かれている。
例えば、「JSON Relational Duality(JSONとリレーショナルの二面性)」とい新たなアプローチにより、アプリケーションによるデータの表現方法とリレーショナル・データベースによるデータの格納方法の間のミスマッチに対応する。JSON Relational Dualityは、データをアプリケーションに適したJSONドキュメントとして、およびデータベースに適したリレーショナル表として同時に使用できるようにすることで、アプリケーション開発を簡素化する。
また、竹爪氏はアナリティクスに関する新機能も紹介した。オラクルは、アナリティクスのプラットフォームとして「Oracle Analytics Cloud」「Oracle Analytics Server」を、また、アプリケーションとして「Fusion Analytics」「NetSuite Analytics」を提供している。
竹爪氏は、新しいイノベーションとして、「Oracle Analytics Cloud」の新機能「Auto Insights」「AI Vision」「セマンティック・モデラー」を紹介した。アナリティクスのビジネスが北米で伸びていることから、「日本でも加速していきたい」と、同氏はアナリティクスビジネスへの意気込みを見せていた。