クラウドインフラは進化し、これからは新しい競争要因が出てくる――パブリッククラウドでは後を追う立場の米Oracleはこう考えている。同社が10月20日まで米ラスベガスで開催中の年次イベント「Oracle CloudWorld 2022」では、創業者兼CTOのLarry Ellison氏がクラウドの将来を予想し、そこに向けたOracleのビジョンを語った。
OCIだけでなく、AWSでもAzureでも動く「MySQL HeatWave」
初日(10月18日)の午後、基調講演のステージに立ったEllison氏は、パブリックインフラクラウド市場を「オープン」の視点から語った。
「今や、ほとんどの企業が複数のクラウドを使っている。クラウドが登場した当初、企業が利用するクラウドサービスは1社だったが、その後2社、3社と増えていき、マルチクラウドが当たり前になった。今後もこの傾向は続く」とEllison氏。このマルチクラウドの現状が、テクノロジー企業の行動に影響を与えているとして、Ellison氏はデータクラウド「Snowflake」を例に取り上げた。
「SnowflakeはAWS(Amazon Web Services)で動き、AzureでもGoogle(Google Cloud Platform)でも動く。OracleはSnowflakeのメッセージをちゃんと受け取っている。実際に、いいアイデアだと思う」とEllison氏は語った。
クラウドが登場する前からOracleのデータベースがさまざまなOSで動いているおり、また、クラウド時代にSnowflakeがさまざまなクラウドで動く状態を作っていることから両社のアプローチが似ていることを認めながら、Ellison氏は、Oracleも「Oracle MySQL Heatwave」でOCI(Oracle Cloud Infrastructure)だけでなく、AWS、Azureの両クラウドユーザーも利用できるようにしていることを紹介した。
割高なエグレス料金強いる囲い込み型クラウドは崩壊する
だが、Oracleは来るマルチクラウド時代、それを超えるビジョンがあるという。「クラウドそのもののインターコネクト(相互運用)」だ。
「主要なクラウドをすべてインターコネクトし、あるクラウドにいても他のクラウドにあるサービスを容易に使えるようにする」とEllison氏。これにより、顧客は選択肢が得られる。これをEllison氏は「クラウドのインターネットであり、真のマルチクラウドだ」とアピールした。
Oracleは既にこのビジョンに向かって歩みを進めている。同社はMicrosoftとの提携を通じて、OracleのクラウドデータセンターとMicrosoft Azureのそれを高速なインターコネクト技術でつないでおり、顧客はOCIにあるデータベースとAzureにあるアプリケーションなど、組み合わせ利用することを実現しているという。
これは、クラウドユーザーが抱えている無視できない重要な問題を解決する。問題とは、データの転送時に発生するイングレスとエグレスの費用だ。アナリティクスなどを行う際に自社から外部のクラウドにデータを送る作業が発生するが、ここで支払うエグレス料金は、開発者に課す“税”と揶揄されるなど、高額になることが話題になっている。
「クラウドは閉鎖的な“ウォールド・ガーデン”としてスタートした。クラウドの中にデータを入れる分にはいいが、外に出すことは簡単ではない」と、Ellison氏はAWSを暗に非難した。
Ellison氏は、AzureとOCIのインターコネクト技術は無料であること、データのイングレス/エグレス料金は無料にしていることを挙げた。そして、メリットはエグレス料金が不要になるというコストだけではない。
「AzureユーザーはAzureコンソールを使って、OCIのOracleデータベースのプロビジョニングなどを行うことができる。逆も然り」と例を挙げ、Ellison氏は同社のインターコネクトの容易さ、シンプルさをアピールし、「マルチクラウドの時代はこうあるべきだ」と続けた。
「ウォールド・ガーデンが崩壊し、顧客はより多くの選択肢を利用できる」「ウォールド・ガーデンの持ち主ではなく、顧客があらゆるサービスを選ぶことができる」と、Ellison氏はマルチクラウドで描くビジョンを説明した。