経済産業省傘下の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、11月1日に「大阪大学発ベンチャー企業のマイクロ波化学(本社は大阪府吹田市)が研究開発・事業化を進めているマイクロ波を利用したプラスチックの新規ケミカルリサイクル事業を実用化する大型設備を開発した」と発表した。この新規ケミカルリサイクルの大型設備は1日当たり1tの廃棄プラスチックのケミカルリサイクルを実現できる能力を持つもの(図1)。同社は、「2030年に廃棄プラスチックのケミカルリサイクル事業を可能にする事業化計画を進めている」という。

  • マイクロ波化学が開発したプラスチックの新規ケミカルリサイクル設備

    図1 マイクロ波化学が開発したプラスチックの新規ケミカルリサイクル設備(NEDOの発表資料から引用)

この新規ケミカルリサイクルの大型設備はマイクロ波化学の大阪事業所(大阪市住之江区)に設けられた工場内に設置されたものだ。

マイクロ波化学はマイクロ波を利用して、化学反応を効率化する技術開発・事業化を進めているベンチャー企業として、回収したプラスチック製品にマイクロ波を照射して、廃棄プラスチック製品を化学分解する技術の事業化も進めてきた。同社は2020年度から、NEDOの「戦略的省エネルギー技術革新プログラム 実用化開発フェーズ」の支援対象企業に採択され、そのリサイクル技術開発・事業化を進め、2021年9月にはマイクロ波プロセスを用いた汎用プラスチック分解技術の開発成果として小型実証設備(1日当たり120kg、正確には1時間当たり5kg程度の処理能力)を実用化し(注1)、今回はこれを大型化したものになる。2030年度には、従来の熱分解法によるプラスチック分解技術に比べて、このマイクロ波プロセスを用いた汎用プラスチック分解技術による、CO2フリーのリサイクル技術・事業化の確立を目指している。

注1:マイクロ波化学は2021年9月27日、汎用プラスチック分解技術の開発成果として小型実証設備(1時間当たり5kg程度の処理能力)を実用化したと公表している。

今回のマイクロ波プロセスを用いた汎用プラスチック分解技術を用いた大型実証設備の技術開発では、廃棄プラスチックにマイクロ波を照射した際に、プラスチックに混ぜてあるフィラーと呼ばれる材料部分にマイクロ波が効率よく吸収される周波数を選んで照射することが必要不可欠となるために、高温複素誘電率測定装置を開発して、実用化している。これは、対象物質のマイクロ波の吸収能力を示す「複素誘電率」をそれぞれに精密に測定する技術で、前回の小型実証設備の開発時点で、高温複素誘電率測定装置の開発に成功していた。今回はこれを大型化したものと推論されている。

同社は「CO2レーザーを廃棄プラスチックに照射し、その照射部分を1000℃程度まで高温に加熱して、成分をガス化して、各成分の複素誘電率を計測する」と、高温複素誘電率測定の原理を説明している(図2)。

  • 今回の大型設備向けに開発した高温複素誘電率測定

    図2 今回の大型設備向けに開発した高温複素誘電率測定(NEDOの発表資料から引用)

同社は「これからは廃棄プラスチックのなかで、まずはポリプロピレンやポリスチレンなどをモデルターゲットとして設定して、リサイクル技術の検証を進めていく計画」と説明している。

注2:マイクロ波化学は、2022年6月24日東京証券取引所グロース市場に上場した。