米Oracleは10月17日~20日、米ラスベガスで開催した「Oracle CloudWorld 2022」で、開発者やパートナーがOracle Fusion Cloud Applicationsを拡張できる「Oracle Applications Platform」を発表した。
米Oracleは10月17日~20日、米国ラスベガスで開催した年次イベント「Oracle CloudWorld 2022」で、開発者やパートナーがOracle Fusion Cloud Applicationsを拡張できる「Oracle Applications Platform」を発表した。本稿では、同製品の特徴をお伝えしたい。
業務アプリケーションにおけるOracleの強みとは
19日、基調講演のステージに立ったアプリケーション製品開発担当エグゼクティブバイスプレジデントのSteve Miranda氏は、コロナ禍、ロシア-ウクライナ情勢、円やポンドなどの為替動向など変化が激しい時代において、対応し、さらにはリードするためにはERP、CXなどを使ってクイックに動く必要がある、と述べる。
「Oracle自身もプロダクトカンパニーからサービスカンパニーに転身を遂げた」とMiranda氏。
業務アプリケーションではさまざまな選択肢がある中、Oracleの強みとして、Miranda氏は「包括性」「テクノロジー土台」を挙げた
包括性については、「サプライチェーンを含むERP、ペイロールやタレント管理・リクルーティングを含むHCM、セールス/サービス/マーケティングなどの顧客体験と、最も包括的なアプリケーションポートフォリオをもつ」とMiranda氏。「テクノロジー土台」に関して、「われわれは、テクノロジー事業も持つ点で唯一のアプリケーションベンダー」という。
Oracle Fusion ApplicationsはOCIによるメリットも享受
Oracle Fusion Applicationsが基盤とする「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」は、商用サービスとして他の企業にも提供するOracleのIaaSだ。つまり、機能、クオリティ、セキュリティなど顧客の要求を満たすべく常に進化している。「この1年半ほど、SaaSの顧客をOCI Gen2インフラへのマイグレーションを進めている」と、Miranda氏は説明した。
これにより、「顧客は最新のデータセンター、最新のExadataなどのマシン、最新版のデータベース、最新のOS、ネットワーク、そしてネットワークセキュリティ、ブロックストレージなどのメリットを享受できる」と、Miranda氏はOracleがアプリケーションの機能以外の面でもアドバンテージを持っていることを強調した。
実際、OracleのSaaSを利用する顧客は、ユーザーインタフェースのクリックの性能が30%改善するという。
-
Oracle Fusion Applicationsは包括性が特徴。SaaSでは、インダストリーソリューションも展開しており、特にヘルスケアは本イベントで大きく取り上げられた。これらの土台が、OracleのIaaSであるOCIだ
ユーザーがアプリを拡張できる「Applications Platform」
そして、CloudWorldで発表された「Applications Platform」は、顧客がOracleのアプリケーションを拡張できるプラットフォームとなる。アプリ開発のプロ向けのビジュアルビルダーとローコードツールの「Oracle APEX」も提供される。
Redwoodデザインシステムを通じてOracleが内部でアプリケーションを構築するために使っているものと同じ技術を利用できる。検索、音声など対話型インタラクションといったコンポーネントを活用したアプリケーションを構築できるという。
具体的なツールとしては、Oracleのユーザー体験コンポーネントである「Redwood UI」を使って構築するためのリファレンスアプリケーション、ページテンプレートなどを備えるソフトウェア開発キット「Redwood UX Building Blocks」が中心となる。
開発したアプリケーションについてフィードバックを得られるテレメトリー、検索、ビジネス・ロジックなども備え、テンプレート、APIなども提供、エンドツーエンドのデータフローを実現できる。
「Applications Platformにより、Fusionアプリケーションを拡張できる。しかも、特別な作業をすることなくFusionアプリケーションと同じようなルック&フィールが得られ、それをハイコードかローコードでできる」とMiranda氏。
企業間取引を統合・自動化する「Oracle BtoB Commerce」
アプリケーション分野におけるCloudWorldでのもう一つの発表が、「Oracle BtoB Commerce」だ。このサービスは、「Oracle Cloud Enterprise Resource Planning(ERP)」の顧客が企業間取引(BtoB)でプロバイダーと直接つながることができるもので、これまでのERPからコンセプトを広げた形となる。
BtoB取引では、受発注のやりとり、請求、支払い、出荷、物流などの処理が発生するが、これに伴い、銀行勘定調整、請求書マッチングなど、さまざまな作業が必要となる。「Oracleはこれを変える」とMiranda氏。
まずはJP Morgan、FedExと提携し、JP Morgan Paymentsをターンキー方式でOracle ERPと接続する。これまで数日~数週間を要していた処理にかかる期間を大きく短縮できるという。
Oracle Fusionの顧客とNetSuiteの顧客は4万社、これらが物流や決済で直接つながることで自動化、コスト削減を進めることができる、とMiranda氏はいう。
基調講演に登場したJP Morganのペイメント担当グローバルトップのTakis Georgakopoulos氏は、ユースケースの1つとして、同社のコーポレートカードを使った場合、出張などの旅費精算において報告書の提出が不要になり、精算処理が効率化されると話した。
「JP Morgan PaymentとOracle Fusionが1つのシステムのように機能する。Fusionをアップデートすると、JP Morganのアカウントも自動でアップデートされる。別の銀行からJP Morganに変更する際も、必要な情報が自動的にアップデートされる」とGeorgakopoulos氏。「この分野はイノベーションの余地がある大きな分野であり、Oracleとの協業を楽しみにしている」と続けた。
BtoB Commerceは、まずは米国で開始する。日本オラクル 取締役 執行役 社長の三澤智光氏は、日本での展開については詳細を明かさなかったが、「ERP、サプライチェーンなどのSaaSは、基本的にその会社の中でプロセスをデジタル化しているに過ぎない。BtoB Commerceは、物流や決済など他の会社とフルでデジタル化ができる」とその潜在性を語る。「これはオンプレミスではできないことで、SaaSの普及は意味があるといえる。(BtoB CommerceでOracleは)次の段階にいく」と語っていた。