日本オラクルはこのほど、オラクル・デジタルによるクラウド事業に関する説明会を開催した。オラクル・デジタルは2017年、中堅・中小企業のデジタル・トランスフォーメーション(DX)を支援する営業組織として発足したが、現在はターゲットの市場を拡大している。

ミッドマーケットからデジタルマーケットへ市場を拡大

オラクル・デジタルは当初、ミッドマーケットを対象にオンプレミスからのクラウド移行を推進することをミッションとしていた。しかし現在は、日本全国の企業に対し、IaaSとPaaSを主に提案している。

理事 オラクル・デジタル 中村庸介氏は、オラクル・デジタルのミッションとして、「DX(デジタルトランスフォーメーション)を目指す顧客を幅広く支援する」「デジタルネイティブな顧客の競争力強化に向け支援する」の2点を挙げた。

「オラクル・デジタルはデジタルをキーワードに、日本のすべての顧客の課題を解決することを目指している。いわば、市場拡大する部隊であり、国内数万社をターゲットに据えている」(中村氏)

  • 日本オラクル 理事 オラクル・デジタル 中村庸介氏

設立から5年経つオラクル・デジタルだが、2020年にミッドマーケットからデジタルマーケットへ市場を拡大し、2021年にデジタルマーケットの活性化に向け企業ライフサイクル軸による活動組織にシフトしたとのことだ。

この5年間の変遷について、中村氏は「オラクル・デジタルが発足した2017年、われわれはクラウドの市場においてシェアをまったく持っていなかった。そのため、キャンペーンをしても人がついてこなかった。Oracle Cloudを知らない顧客にアプローチするところから始めたので、ノウハウが蓄積しており、これが強みとなっている」と語った。

  • ミッドマーケットからデジタルマーケットに市場を拡大したオラクル・デジタル

ガバナンスを維持しつつ、クラウド移行を支援

中村氏は現在、企業においては、「クラウドベンダーのロックイン」「最適化されていないワークロード」「学習忌避が引き起こす停滞」といった課題が顕在化しつつあるといして、オラクル・デジタルではこうした課題の解決を支援すると述べた。

「企業は内製化に向けてクラウドに移行する傾向があるが、クラウド化が目的となっている企業もある。クラウド化においては、ガバナンスも維持する必要がある。また、ワークロードが最適化されていないと、性能の限界が早く来るし、スケールアップが容易に行えず、ビジネスの成長の阻害要因となる」(中村氏)

オラクル・デジタルでは、5年間にわたり、1人の営業が他業種を担当してきたことから、企業におけるITに関する共通の課題を把握している。そのため、企業の共通課題を解決するノウハウが提供できることが、オラクル・デジタルが提供する価値の1つだという。

さらなる課題解決の施策として、「単一のベンダーに依存していると、エンジニアのスキルが上がらない。われわれはマルチクラウドを推進していきたい」と、中村氏は話した。

マルチクラウドにまつわる既成概念を覆す

さらに、中村氏は市場の動向として、「これまでは利益率を考えていない企業が多かったが、状況が変わった。株主や投資家の期待値が、トップラインの成長から利益の出せるサービスへ変わっている」と指摘した。こうした中で、「性能とコストのバランスがとれた同社のソリューションがあらためて注目を集めている」と、同氏は述べた。

中村氏はマルチクラウドを進める中で、「まずはクラウドのデータを置く部分をOracle Cloudにください」と訴えた。データストアとしての合理的な強みをアピールすることで、それに付随したサービスも使ってもらうことを狙っているという。

中村氏は、Oracle Cloudはアウトバウンドの転送費が安いため、競合のクラウドと比べてコストメリットがあるとアピールした。中でも、Microsoft Azureはデータセンターを直接つなげているので、さらにレイテンシーも低い。そのため、マイクロソフトのパートナーからの引き合いが増えているそうだ。

  • Oracle Cloudのデータ転送コスト

そして、中村氏は以下のような「マルチクラウドにまつわる既成概念を覆したい」と語った。これを実現するため、同社はTCOの向上やネットワーク性能の改善に努めている。

  • マルチクラウドは本番環境では利用できない
  • マルチクラウドはシングルクラウドより高価である
  • マルチクラウドは遅い
  • マルチクラウドは複雑すぎる

「ベストオブブリードをクラウドの世界でも実現したい」と話していた中村氏。古くから付き合いがある顧客はこうしたオラクルの考えを理解してくれるそうだ。