Googleは10月27日、動画サイト「YouTube」やYouTube広告の利用動向を紹介する「YouTube Brandcast 2022」を両国国技館(東京都 墨田区)で開催した。なお、YouTubeは2007年に日本でサービスを開始し、今年2022年で15周年を迎える。

YouTubeはショート動画とショッピング機能に注力

イベントの開催にあたり、YouTube CEOのSusan Wojcicki(スーザン ウォジスキ)氏は動画でコメントを寄せ、「15年前に日本語版のYouTubeを開始して以来、日本のクリエイターはファンを増やし、トレンドを生み出しながらクリエイティビティの限界に挑戦してきた。現在ではZ世代から高齢者まであらゆる人が楽しめるサービスとなった」と語っていた。

さらにSusan氏は「YouTubeは歴史の中で常に正しい側面であり続けたい。多くのコミュニティを守るためにも、サービス事業者としての運営責任を果たしていく」と続けた。特に、誤情報への対策を強化し、ポリシーの策定や専門性の高い人材の育成、機械学習領域への投資を高めていくとのことだ。

現在YouTubeが注力しているのは、「ショート動画」だ。YouTubeショート動画は、スマートフォンと YouTube アプリの「YouTube ショートカメラ」があれば作成できる動画フォーマットで、最大60秒までの縦型の動画を投稿できるサービス。現在のところ、ショート動画は世界100カ国以上で提供され、月間ログインユーザーは15億人を超えている。今や、ショート動画は動画クリエイターが視聴者やファンとつながるための新しい手法となっている。

また、「ショッピング機能」もYouTubeの重要なテーマであり、多くの生活者が何を買うべきかを決断するために、YouTubeにログインする行動がすでに見られているという。YouTubeは今後さらに機能の改善などを通じて、視聴者が商品を発見し購入しやすくなるよう支援するほか、クリエイターとブランドが連携しやすい環境の整備を進めるとのことだ。

71%の人が「YouTubeの影響で買う予定のなかったものを買ったことがある」と回答

続いて、Google日本法人でYouTubeの代表を務める仲條亮子氏がステージに登場し、国内におけるYouTubeの利用動向と最新の状況について、調査結果を基に説明した。

  • Google Japan マネジングディレクター YouTube日本代表 仲條亮子氏

    Google Japan マネジングディレクター YouTube日本代表 仲條亮子氏

国内でのサービス開始から15年が経過し、現在のYouTubeは18歳以上の月間ユーザー数は7000万人を超える規模となった。これは18歳以上の人口の65%以上に相当する。45歳から64歳の月間ログインユーザーだけを見ても2500万人以上であり、幅広い年代の視聴者の存在がうかがえる。

また、動画サービス利用者のうち、約91%が「YouTubeは他サービスと比較して、自分にとってより良いコンテンツを見つけられる」と回答したという。さらに、1年後の自身の姿を想像して答える質問に対して、約80%が「視聴したい動画がある場合には、まずYouTubeを利用するだろう」と回答したとのことだ。

上記の通り、ショッピング機能への注力を示しているYouTubeだが、国内のYouTube視聴者のうち約63%が「買いたい物を探しているときにYouTubeが商品やサービスに関する最も質の高い情報を得られる」と回答している。約85%の人は「もともと買おうとしていた物よりもより良いものを発見できる」と回答した。

「YouTubeの動画クリエイターが最も重要な情報提供者である」と回答した人は約69%にも上り、クリエイターを通じて必要な情報を得るプロセスが視聴者に広く受け入れられているようだ。

さらに、「YouTubeの影響でもともと買う予定のなかったものを購入したことがある」と回答した人は71%だ。視聴者の76%の人は「最終的な買い物の決断の自信を与えてくれる」と回答していることからも、YouTubeを通じて生活者の購買行動も変化しているのだろう。

このようにYouTubeは日本経済への影響も大きく、2021年はGDPに3500憶円以上の影響を与えたことが試算されているほか、10万人以上のフルタイム相当の雇用を生み出したそうだ。また、子どもを持つ親のうち72%が「YouTubeは子どもたちの学習に役立つ」と答えており、生活のさまざまな場面でYouTubeが活用されていることがわかる。

仲條氏は、YouTubeが私たちの生活の中で広く活用されていることに触れながら、「YouTubeに出稿されている広告は単に広告としての機能にとどまっていない。動画クリエイターにとっては新たな動画制作の機会となり、視聴者にとってはクリエイターの次の動画を楽しむための、そして新たな学びの機会を得たり新たな商品に出会ったりするための機会となっている。YouTube広告は多様な『好き』を支えるほか、日本の経済や社会を支えるエコシステムの中でも大きな役割を持っている」と説明していた。

YouTubeの2大トレンド「コネクテッドTV」と「ショート動画」

次にステージに現れたのは、Google日本法人でYouTubeのカルチャー&トレンドマネージャーを務める前岡真琴氏だ。同氏によると、現在YouTubeで10万人以上の登録者を持つチャンネルは7700を超え、100万人以上の登録者を持つチャンネルは500を上回るという。いずれも昨年から約30%増加している。

  • Google Japan YouTube カルチャー&トレンドマネージャー 前岡真琴氏

    Google Japan YouTube カルチャー&トレンドマネージャー 前岡真琴氏

前岡氏はYouTubeならではの2つのトレンドを紹介した。1つ目はコネクテッドTVでの視聴の増加だ。インターネットに接続できるコネクテッドTVでYouTubeを視聴している人は国内だけで3500万人を超えており、テレビ画面でYouTubeを視聴する際はモバイルやデスクトップPCで視聴する場合と比較して平均の視聴時間は約2倍とのこと。

テレビ画面でYouTubeを視聴するユーザーのうち、25%以上が「動画をほぼテレビ画面でのみ視聴する」と回答しており、コネクテッドTVでのYouTube視聴が生活の中に浸透していることがうかがえる。

コネクテッドTVを用いたYouTube視聴は、教育やファッション、お笑い、旅行など、誰かと一緒に大画面で楽しめるジャンルの視聴時間が特に伸びているようだ。前岡氏は「これまでのようにいつでもどこでも1人で動画を楽しめるYouTubeから、リビングなどでみんなで一緒に動画を楽しめるYouTubeへ、1日の中のあらゆる場面で動画を視聴できるサービスへと変化している」と述べていた。

2つ目のトレンドはYouTubeショート動画だ。テレビ画面での視聴時間が伸びている一方で、YouTubeは引き続きモバイルでの視聴体験向上にも注力するという。グローバルでは1日あたり300億回ショート動画が視聴されており、これは昨年の約4倍に相当するそうだ。ショート動画は特にZ世代の視聴者が多いとのこと。

また、Google日本法人代表の奥山真司氏もステージに登場し「私たちの生活が急速に変化する中で、広告のあり方も大きく変わっている。その鍵を握るのは紛れもなく、統合されたコミュニケーションであるはず。統合されたコミュニケーションによるブランド価値の向上、長期的な成長、収益性の向上を実現できるYouTubeだからこそ、多くのマーケターの方々に選ばれているのだろう。今後も引き続き選んでいただけるよう、パートナーシップの強化とソリューションの強化に注力していく」と力強く述べていた。

  • Google Japan 代表 奥山真司氏

    Google Japan 代表 奥山真司氏