DX推進が叫ばれている。多くの企業はさまざまな角度からDXを目指して取り組みを進めているが、その過程において、“壁”に当たることもある。特に製造業の現場では、DX推進以前の、ネットワークやセキュリティの課題に直面する例も多い。

10月4日に開催された「TECH+セミナー ネットワークDay 2022 Oct. クラウド時代の企業通信インフラ」において、「DXプロジェクト現場で起こるNWとセキュリティの理想と現実」と題して講演したのは、INDUSTRIAL-X 代表取締役CEOの八子知礼氏だ。

DXの本質と課題

八子氏は講演の冒頭、デジタルトランスフォーメーション(DX)の定義を改めて提示した。同氏によるとDXとは、デジタル技術をビジネス全体にわたって活用することにより、ビジネスやライフスタイルなどをこれまでとは異なる新しいモデルに変革することである。また、DXで目指すのは「デジタルツインによる予測可能な新しい姿」 であるという。

  • 八子氏によるデジタルトランスフォーメーション(DX)のイメージ図

「現実空間とデジタル空間との間でシミュレーションを繰り返しながら、予測可能な事業の姿を描くことがDXの本質と言えるでしょう。ただし、実際には既存事業のアナログな領域から始めなければならず、これがDXやクラウド化を実践しようとした際に課題となっているのです」(八子氏)

さらに昨今ではESG経営を実践するためにも、DXによるデータ活用が求められている。ただし、データを収集し、そのデータによって事業モデルを説明するには、設備稼働状態や作業時間、業務や作業進捗など、さまざまな情報の見える化が必要になる。

「これらの情報を紙で収集するのは不可能です。デジタル化やDXは、ESG実現という観点からも重要になっています」(八子氏)

一方、INDUSTRIAL-X が実施した「DX意向調査2022」によると、全社的なDXの取り組みが増加していることから、DX人材の不足が生じている可能性があると八子氏は指摘する。