IPA(情報処理推進機構)は10月26日、日本企業のDX推進をめざして2021年11月に公開した「DX実践手引書 ITシステム構築編」に、DX実践の課題を克服した事例やAPI活用事例、API全体管理やアジャイル開発といった技術要素の解説を追記し、完成版を公開した。
完成版では、DX実践における課題と克服に向けた取り組みや、その結果が整理されている。具体的には、システム開発の課題や、社内変革の地盤固めに関する課題を克服した事例を紹介。例えば、作業の内容記録を手書きで倉庫保管していた製造業A社が、「外部リソースの活用」とそれによる「新しい開発手法の適用」によりDXを実現するまでの試行錯誤を1枚の図で表現している。
また、API活用企業の事例を紹介し、API全体を管理する考え方も整理。具体的には、多数のAPIを全体管理するための考え方を「技術的な観点」と「組織的な観点」に分けて整理している。
「技術的な観点」では、API利用側とAPI提供側の間に位置し、API群の管理や実行時の振る舞いを容易にする「APIゲートウェイ」を中心に、APIの開発を支援する「API開発支援機能」やAPIの動作を監視する「API監視機能」について説明。「組織的な観点」では、企業内にAPIを全体的に管理する役割を持った組織(API管理者)を作ることが望ましいとし、そのうえでAPI管理者として推進が必要な「標準化の推進」「セキュリティ強化」「パフォーマンス改善」などについて解説。
さらに完成版の手引書には、アジャイル開発の概要、効果、考慮点を明示。また、アジャイル開発の先進的な取り組み事例として、内製化にシフトした事例やリーン・スタートアップの事例など、4社についてそれぞれの特徴を「アジャイル開発の家」で整理している。
IPAが2022年8月に公開した「DX推進指標 自己診断結果 分析レポート(2021年版)」では、日本企業のDXは加速しているものの、依然として、全社戦略に基づいて部門横断的にDXを推進できるレベルに達していない企業が8割以上存在することを明らかにした。IPAは今回の手引書により、企業のITシステムの変革がより適切に進み、DXが加速していくことを支援していく考えだ。