KDDIは10月20日、記者説明会を開催し、同社の中期経営戦略とサステナビリティ経営について説明した。会見には、KDDI コーポレート統括本部副統括本部長兼サステナビリティ経営推進本部長の最勝寺奈苗氏が登壇し、KDDIのサステナビリティに対する取り組みとこれからの目標について語った。

サステナビリティ経営は中期経営戦略の軸

KDDIグループは、サテライトグロース戦略の推進とそれを支える経営基盤の強化により、パートナーと共に社会の持続的成長と企業価値の向上を目指すことを中期経営戦略として掲げている。経営戦略に「長期志向」と「社会価値」の観点を組み入れることで、「持続的成長」を実現するという。

そして、グループの重要課題(マテリアリティ)としては、「通信を核としたイノベーションの推進」「安心安全で豊かな社会の実現」「カーボンニュートラルの実現」「ガバナンス強化によるグループ経営基盤強化」「人財ファースト企業への変革」「ステークホルダーのエンゲージメント向上」を設定している。これらの課題を解決することで8つの提供価値を生み出すという。

「6つのマテリアリティを通じて、KDDIは8つの提供価値を生み出します。その提供価値とは、『未来社会の創造』『サステナブルな産業・インフラ環境の実現』『地域共創の実現』『グローバルでの地域・経済格差の解消』『カーボンニュートラルの実現』『KDDIグループ全体の経営基盤強化』『人権の尊重』『多様なプロ人財の活躍とエンゲージメント向上』の8つです」(最勝寺氏)

  • KDDIの8つの提供価値について説明する、KDDI コーポレート統括本部副統括本部長兼サステナビリティ経営推進本部長 最勝寺奈苗氏

8つの提供価値の中でも、説明会のメインのテーマであった「サステナブルな産業・インフラ環境の実現」や「カーボンニュートラルの実現」に関しては力を入れてい                        るようで、「産業・インフラDXへの貢献」「顧客の働き方改革を推進」「通信設備を含むKDDIのカーボンニュートラル化」といったキーワードを重点的に説明している印象を受けた。

ちょいのりサービス「mobi」で地域の活性化や移動ニーズの多様化にアプローチ{#ID2}

続いて、サステナビリティの取り組みとなる「5G通信を核としたサテライトグロース戦略」について、説明が行われた。

KDDIは、5G通信を核として「金融」「DX」「LX」「エネルギー」「地域共創(CATVなど)」に注力し、注力領域の拡大を図っていくという。注力事業領域の具体事例として 、「モビリティ」「アパレルDX」「スマートドローン」「メタバース」の4点が紹介された。

「モビリティ」に関しては、高齢者の運転免許証の返納件数が2011年から2020年までの期間で、約8倍にも増えているにもかかわらず、バスなどの交通機関の路線は減っているという社会課題を踏まえた取り組みが進められている。

例えば、WILLER と設立した合弁会社のCommunity Mobilityは、出発地と目的地をリクエストすると、エリア内ならどこでも乗り降りできるエリア定額乗り放題サービス「mobi」を提供している。同サービスは、移動に不安を抱える高齢者や子どもの送迎に苦労する子育て世代に向けて、ワンマイルの自由な外出を支えている。モビリティサービスと通信を掛け合わせている同サービスにより、高齢者や子育て世代の移動不安を解消するだけでなく、地域の活性化や移動ニーズの多様化にもアプローチしていきたいという。

  • モビリティサービス×通信のちょいのりサービス「mobi」

最大1,000億円、KDDI初のサステナビリティボンド「KDDIつなぐチカラ債」発行

さらなるサステナビリティに関する取り組みとして、10月から開始される予定のKDDI初となるサステナビリティボンド「KDDIつなぐチカラ債」が紹介された。

サステナビリティボンドとは、調達資金のすべてがグリーンプロジェクトやソーシャルプロジェクトの初期投資またはリファイナンスのみに充当され、かつ、「グリーンボンド原則」と「ソーシャルボンド原則」いずれか一方または両方の4つの核となる要素に適合する債券のこと。

KDDIつなぐチカラ債は発行総額を1,000億円として設定し、グリーン&ソーシャルプロジェクトとして「5G」、ソーシャルプロジェクトとして「BCP対応」「宇宙通信」「ドローン」「モビリティ」「ゼロトラスト・ソリューション」「文教分野DX」、グリーンプロジェクトとして「CN」「VPP」を資金の使途とする。

「最大1,000億円の資金を最大限に活用し、社会課題の解決や地球環境の保全につながる事業を推進していきたいと考えています」(最勝寺氏)

KDDIの経営基盤強化のための3つの主要テーマとは?

最後に、経営基盤強化の主要テーマである「カーボンニュートラルの実現」「ガバナンス強化によるグループ経営基盤強化」「人財ファースト企業への変革」について、説明が行われた。

カーボンニュートラルに関しては、KDDIのカーボンニュートラル達成目標を2050年度から2030年度まで大幅に前倒しし、データセンターは全世界で2026年度カーボンニュートラルを目指す方針を述べていた。

この目標の達成のために、自社だけでなくスタートアップと協力しての取り組みを進めることで、脱炭素社会・循環型社会の実現に貢献していくという。具体的には、スタートアップ企業に5年間で約50億円の投資をしており、同日、新たにアミカテラという植物性かつ自然環境で分解されるプラスチック代替素材を開発している企業への出資が決定したことが発表された。

最勝寺氏は、会見を以下の言葉で締めくくった。

「本日の説明会のまとめとして、KDDIでは、『サステナビリティ中期目標(KPI)を掲げサステナビリティ経営を実践』『事業を通じた社会課題解決とそれを支える経営基盤強化』『サステナビリティ経営の実践を促進するための全社員への理解浸透』という3点に注力し、今後もサステナビリティ経営を推進していきたいと考えています」