具体的には、量子ドット/量子ドット界面にペロブスカイト界面層を形成する新しいパッシベーション法により、量子ドット光吸収層での欠陥密度の低減と光励起キャリア寿命、さらに拡散長の増加が行われた。

  • 今回の研究の模式図

    今回の研究の模式図 (出所:電通大プレスリリースPDF)

量子ドットインク中に適量のホルムアミジンヨウ化水素酸塩を添加することにより、スピンコートで作製された量子ドット膜内の隣接する量子ドットの間にペロブスカイト層を形成。透過型電子顕微鏡像により、量子ドット表面にペロブスカイト単分子層が形成され、それによって量子ドットがほぼすべての(200)結晶面に沿って互いに架橋していることが確認された。

これにより、量子ドット膜の欠陥濃度が40%減少するとともに、キャリア移動度が向上し、量子ドット膜内の光生成キャリアの拡散距離が1.7倍に増加。その結果、量子ドットの光吸収層の厚さが11%増加し、デバイスの変換効率は13%以上になったという。今回の提案方法により、量子ドット表面に単層ペロブスカイトのシェルが簡便に形成され、量子ドット膜のキャリア移動度の増加と量子ドット界面欠陥の低減が確認された。

また、電子輸送層/量子ドット界面の保護膜として、厚さ約10nmのPMMA(アクリル樹脂)とフラーレンの誘導体のフェニルC61酪酸メチルエステルの混合層が導入され、電子輸送層のダメージを防ぐとともに、界面での欠陥密度を低減するなどの電子輸送層/量子ドット界面のパッシベーションが行われた。

さらに、バランスを取りながら電子と正孔を抽出し、量子ドット/正孔輸送層の界面での欠陥を低減するために、n/p型の両硫化鉛量子ドット層の間に、正孔輸送性を持つPMMAと酸化グラフェンの混合膜が導入された。これにより、正孔移動度が著しく向上し、量子ドット/正孔輸送層界面における正孔の抽出効率が高まり、電子と正孔の輸送と収集のバランスが向上したとする。

これらの結果、単一接合の硫化鉛量子ドット太陽電池として15.45%の変換効率が達成されたという。

今回の成果により、これまで硫化鉛量子ドット太陽電池の効率の向上を制限していた「低い曲線因子」の問題が解決されたこととなり、研究チームでは、将来の量子ドット太陽電池の産業化がさらに発展することが期待されるとしているほか、今回開発された相乗効果を持つ3つの界面のパッシベーション法とその発想については、量子ドット太陽電池の光電変換特性を向上させる新たなアイデアを提供するだけでなく、ほかのヘテロ接合太陽電池やLEDにも応用可能なことから、今後、高性能な光電変換デバイスへの展開も期待されるとしている。