電気通信大学(電通大)は10月19日、硫化鉛を用いた「量子ドット太陽電池」を開発し、界面を制御することで同太陽電池として15.45%のエネルギー変換効率を達成したことを発表した。
同成果は、電通大大学院 情報理工学研究科の丁超博士研究員、同・沈青教授らの研究チームによるもの。詳細は、環境発電やエネルギーの変換・貯蔵などに使用される材料に関する全般を扱う学術誌「Advanced Energy Materials」に掲載された。
次世代の量子ドット太陽電池の有望材料である、溶液法で作製された硫化鉛コロイド量子ドットは、サイズの変化で光吸収領域の制御が可能なほか、高い吸収係数を有することや、多重励起子生成ができることなど、優れた特性を持つことが知られている。
典型的な硫化鉛量子ドット太陽電池は、厚さ数百nmのn型量子ドット層(光吸収層)が、電子輸送層と正孔輸送層の間に挟まれている。量子ドット中で光生成されたキャリアは、量子ドット光吸収層、電子輸送層、正孔輸送層、および2つの電極の間のあらゆる界面を含む輸送経路を通って移動する。これらの機能層と界面における欠陥によって光生成キャリアの無輻射再結合が発生するため、電極により電荷が抽出される前に電子と正孔の損失が起こってしまう。
一方、量子ドット光吸収層での電子(多数キャリア)と正孔(少数キャリア)の輸送速度の大きな違いにより、電子輸送層/量子ドットと量子ドット/正孔輸送層の界面において電荷蓄積が起こりやすくなる。これにより、デバイスの直列抵抗の増加と並列抵抗の低減が起こり、光電変換効率が低下してしまうとする。
しかしこれまでの大半の研究では、硫化鉛量子ドット太陽電池の単一界面に対してのみパッシベーション法が用いられていた。そのため、界面欠陥による無輻射再結合の抑制と、バランスのよい電子と正孔の抽出を同時に実現することは困難だったという。
そこで研究チームは今回、硫化鉛量子ドット太陽電池にある3つの界面(量子ドット/量子ドット、電子輸送層/量子ドット、量子ドット/正孔輸送層)のパッシベーションの相乗効果を利用できる新たな界面エンジニアリングを提案することにしたとする。