増加の一途を辿るデータ。13年前にフラッシュのみを手がける新鋭ベンダーとして登場した米Pure Storage(ピュア・ストレージ)は、ディスクからフラッシュへという改革だけではなく、サービスモデルでも先進的な取り組みを進めてきた。会長兼CEOとして、同社を率いるチャールズ・ジャンカルロ氏は、現在、そして今後のストレージ市場をどう見ているのか?製品戦略から競合まで、さまざまな話を伺った。

  • 米Pure Storage 会長兼CEOのチャールズ・ジャンカルロ氏

    米Pure Storage 会長兼CEOのチャールズ・ジャンカルロ氏

今後5年でセカンダリストレージのフラッシュへの移行が進む

--今年は第1・第2四半期ともに好調です。成長の要因はどこにあるのですか?また、オールフラッシュ市場をどのように見ていますか?

ジャンカルロ氏(以下、敬称略):第1四半期は、米国企業の中でサプライチェーンに懸念を感じて早期にオーダーする企業があり、その納入があったことから好調でした。

そのような特需を除いても、30%程度で成長しました。米国はもちろん、それ以外の国でも成長しています。

ストレージは10年前は磁気ベースが主流でしたが、現在のプライマリストレージはオールフラッシュに置き変わっています。

しかし、セカンダリストレージやニアラインストレージはまだディスクが用いられています。フラッシュの価格低下のスピードは磁気ベースより早い速度で進行しており、今後5年でセカンダリストレージのフラッシュへの移行が進むでしょう。

セカンダリストレージにフラッシュを使わない理由として価格もありますが、同じぐらい大きな問題が磁気ベースのストレージが最もコスト効率が良いと思い込んでいる精神性です。

TCO(総所有コスト)を考えると、フラッシュのコスト効率は磁気ベースよりも優れています。例えば、面積、消費電力、冷却などを考慮すると、フラッシュの方がコスト効率に優れるほか、ハードディスクでは入れ替えなどの際に人手が必要になりますが、フラッシュは不要です。

--“Storage-as-Code”の「Pure Fusion」の市場における位置付けは?今後の計画についても教えてください。

ジャンカルロ:Pure Fusionはインフラ、そして開発者向けのインタフェースの両方で、クラウドの運用モデルをもたらすオンプレミスのストレージをサービスとして利用するものです。

クラウド大手と競合するというより、企業が社内に保持しておきたいアプリケーションやプロセスがある場合に便利なソリューションです。

また、マネージドサービスプロバイダ(MSP)もPure Fusionを使ってインフラ自動化やソフトウェアインタフェースを顧客に提供できます。

現在は、FlashArrayを管理の対象としていますが、今後はファイルストレージ、オブジェクトストレージ、さらにはKubernetesコンテナストレージであるPortworxにも対象を拡大していきます。

ハードウェア、ソフトウェアの両方に強み

--企業・組織ではデータ活用が課題です。データレイクなど新しい手法のトレンドは、Pure Storageのポートフォリオや市場戦略に影響を与えているのでしょうか?

ジャンカルロ:フラッシュは高価なので、われわれはティアごとにアプローチしています。なお、DWH(データウェアハウス)で付け加えるとすれば、HDFS(Hadoop Distributed File System)ファイルシステムをベースとするHadoopは、高価なソリューションです。

コンピュートとストレージが同量という前提で構築されており、コンピュートだけ拡張したい時、ストレージだけ拡張したい時にそれができないため経済的とは言えません。そこで、われわれはFlashBladeでコンピュートを分離するアプローチを提案しています。

ユースケースとして、Meta(旧Facebook)は10PB(ペタバイト)のスケールアウト用ストレージの「FlashBlade」、175PBのオールフラッシュアレイ「FlashArray//C」を導入して、新型のスーパーコンピューター「AI Research SuperCluster」を構築しています。

FlashBladeはデータウェアハウス、FlashArrayはデータレイクのオペレーション部分に使われています。

--アズ・ア・サービスのEvergreenの強みを教えてください。ハードウェアから別のレイヤーに競争が移れば、今後はハードウェアのスペックを気にしなくなるのでは?

ジャンカルロ:Evergreenは創業時からの考え方のもとで、テクニカルなアーキテクチャに組み込まれた無停止を実現します。

ユーザーの環境を停止することなく、システムをアップグレードすることができます。他社では、計画的なダウンタイムとして“スケジュールドダウンタイム”を持ちますが、当社はありません。これにより、コストの節約などさまざまなメリットを得られます。

アズ・ア・サービスを契約する際、製品を購入しているわけではありません。どのマシンなのかは分からず、認識しているのはサービスレベル合意(SLA)だけです。そうなると、ハードウェアのスペックは気にしなくなるでしょう。

例えるなら、清潔な洋服を着たいと思ったときに、これまでのモデルは洗濯機を買い、洗濯するというものでした。一方、サービスモデルでは清潔な洋服が届くことになり、どの洗濯機で洗濯しているのかは気にしないということと同じです。

Pure Storageの戦略は、ハードウェアはこれまで通り、価格、性能、信頼性の期待を満たす製品を構築することに加え、顧客が簡単にサービスを利用できるソフトウェアも提供します。

当社は、3~5年前から95%のエンジニアがソフトウェアエンジニアとなっています。ハードウェアとともに、強みはソフトウェアにもあります。

日本のDX推進を支援するパートナーに

--8月のイベントで以前のテーマから変化した意図は?また、現在のPure Storageをどのように見ていますか?最後にDXを進める日本企業へのメッセージもお願いします。

ジャンカルロ:以前のテーマでもある「モダン・データ・エクスペリエンス」は継続しています。

ただ、8月のイベント時は環境が複雑化している企業・組織にダイレクトに訴えることができる、と考えたため「Uncomplicate Data Storage, Forever(データ活用をいつまでもシンプルに)」としました。

われわれの製品を使うことで、シンプルにできると訴求したかったのです。最終的には体験であり、あらゆるプロダクトカンパニーはユーザー体験こそが重要です。

会社自体は少しずつ成熟してきていると感じています。ユーザーに大企業も入っており、継続してプロセスを改善して、サポートやプロフェッショナルサービスを洗練させています。

日本でPure Storageの知名度は低いかもしれませんが、当社は最先端のストレージ技術、高い信頼性を自負しています。ユーザーにフォーカスし、NPS(Net Promotor Score)はBtoB企業の上位1%に位置する85.2を記録しています。

Pure Storageは、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進していく企業にとって信頼できるパートナーになることができます。当社の技術、サービス、サポートを活用して、安心してDXを進めていただければと思います。