Keysight Technologiesの日本法人であるキーサイト・テクノロジーは10月13日、10月25日から28日にかけて日本でオンライン開催する予定の「Keysight World Innovate 2022」で予定されているテーマの1つ「デジタルツインと人工知能(AI)による開発の加速」(3日目に開催予定)に関する説明会を開催。2020年に同社が買収したEggplantのR&D Solution EngineeringでKeysightsのChief Technology Evangelistも務めるJonathon Wright氏が、複雑化するシステムの開発におけるテストの自動化について説明を行った。
現在、Keysightとしては、「ワイヤレス」「オートモーティブ」「量子」「ネットワーク/クラウド」「IoT」「AI」を6つのメガトレンドとして認識し、これらが世界を変えていくテクノロジードライバとなると考えているという。そして、これらの領域における開発において、同社の顧客がどのような課題を抱えることになるかというと、より高度かつ複雑なシステムの構築が求められていくことになるとする。
例えばエレクトロニクス化が顕著な自動車分野では、車車間通信や路車間通信などが必要となってくる。その場合、外部ネットワークに問題なく接続されるかどうかを担保する必要が生じるが、その確認のために開発工数が増加するほか、技術的にも複雑さが増すことになる。
Keysightはこれまでオシロスコープやアナライザなどの計測器メーカーとして、物理レイヤを中心にビジネスを展開してきたが、そうした背景から近年はIXIAの買収をはじめとしたネットワーク分野への進出も果たし、また今後の顧客のシステムの複雑化が進むことを見越してEggplantを買収。それによりアプリケーションレイヤへの対応も果たし、すべてのレイヤにおける製品提供をすることで、さまざまな顧客のソリューション開発を加速させることを進めているとする。
このEggplantのソリューションというのがAIを用いたアナリティクス技術を背景にした、テスト環境の作成と、その実行を自動化するソフトウェアテストプラットフォームを提供するものとなる。
Digital Automation Intelligenceプラットフォームと呼ばれるこのソリューションは、ブラウザを介して物理レイヤからアプリケーションレイヤまで、必要に応じたテストパターンを作成(最初は人間の手で手順を作る必要はある。パターン生成はローコードでできるという)。自動的に行われるテストを踏まえて、AIと機械学習(ML)によって、新たなテストパターンの生成や強化、重点領域に特化した部分テストといったことが容易に行えるようになるという。
もちろん、同社のUXMテストプラットフォームと連携させて計測データを取得したりと行ったことも可能だが、そうした計測器と連携しないソフトウェアに対するテストも実施可能だという。例えば2021年にはSalesforceとシームレスに接続し、LightningやClassicのデプロイテストに必要なアセットとスクリプトを自動生成してカスタマイズすることを可能にしたとしている。
そのため、このソリューションは幅広く、自動車や航空・宇宙・防衛、製造業といったモノを作り出す業種のほか、金融や小売業といった分野でも活用されているとする。
最新の取り組みとなるメタバースについては、MicrosoftやMetaと連携して製品づくりを進めており、HoloLens 2のテストなどもすでに可能としているとする。
「将来のテストの自動化に向けては、Design、Automation、Test&Assurance(DATA)と開発全体を囲むようなテストソリューションとすることをビジョンとしている」(Wright氏)としており、そうした形で研究開発を進めることで次世代プラットフォームが整ってくるとする。また、それによりデジタルツインの生成が、自律的かつ自動的に行われ、テストのためのスクリプト生成さえも不要になる未来が訪れると、将来のシステムやソリューションのテストは、どれだけ複雑化していっても、人の手を介することがなくなるため、対応できるようになると説明する。
また、すでにそうした未来に向け、こうしたテストソリューションで行った結果を用いて、ソフトウェアテストの国際規格であるISO/IEC/IEEE 29119の認証を取得しやすくする動きなども進んでいるとする。
なお、このテストソリューションは、同社のハードウェアとは関係なく利用することが可能で、サブスクリプション形式で現在は提供されているという。