注意機能が右脳優位になる理由は、顕著性ネットワークに属する島皮質が右脳優位性を示すためとされている。島皮質が右脳優位性を示す理由は、「フォンエコノモ神経」(VEN)の左右の脳での分布量の違いが原因と考えられるという。
VENは、主に島皮質と「前部帯状皮質」に存在することがわかっており、右脳には左脳よりも3割ほど多く存在するほか、VENはほかの神経細胞より信号を伝達する樹状突起が長く、そのため神経間の信号伝達を促進する高い伝導性を持っていると考えられており、右脳にVEN神経が多く存在するため、情報をより早く処理でき、結果として左脳よりも右脳の活動が高まることが考えられると研究チームでは説明する。
これらの結果から、入力される知覚刺激に対して、左脳よりも右脳での活動が増加し、その基となるのが顕著性ネットワーク中の島皮質であると考えられるとする。左脳に比べて、右脳にVENが最大3割程度多く存在するという事実は、今回行った脳波実験およびfMRI実験の結果と合致するとしている。
なお、今回の研究成果により、右脳損傷時に多く生じる半側空間無視に島皮質が関与していることが示されたことから研究チームでは、注意と島皮質の関与の詳細を基礎的な研究から明らかにできれば、半側空間無視という病態の緩和につながる治療法など、その応用を生み出せる可能性が出てくるとするほか、右脳は自尊心や他者の気持ち理解、社会性などにも関与していることがわかっていることから、研究をさらに進めることで、将来的には「なぜ人間にとって右脳が重要なのか」という謎の解明につながる可能性があるともしている。
また、今回、島皮質が右脳優位性になる理由として、VENが右脳により多く存在するということで説明ができたが、「なぜ右脳に多くのVENが存在するのか」については不明な点が残っているともしている。島皮質は迷走神経と呼ばれる神経の入力を受けており、迷走神経は心臓や内臓に張り巡らされているが、それは、左脳と比べて右脳は身体とより深くつながっている可能性を示唆しており、今後は、体性感覚刺激などの刺激を用いてfMRIや脳波の実験を行い、右脳優位性と島皮質の関係をさらに解き明かしていく予定としている。