スウェーデン王立科学アカデミーは5日、2022年のノーベル化学賞を、簡単な化学反応により多彩な機能を持つ分子を作る技術「クリックケミストリー」を開発、発展させた米欧の3氏に授与すると発表した。

受賞が決まったのは米スタンフォード大学のキャロライン・ベルトッツィ教授(55)、デンマーク・コペンハーゲン大学のモーテン・メルダル教授(68)、米スクリプス研究所のバリー・シャープレス教授(81)。シャープレス氏は野依良治氏らと共同受賞した2001年以来、2度目のノーベル化学賞となる。2019年の吉野彰氏以来となる、日本人の化学賞受賞はならなかった。

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    クリックケミストリーを発展させた3氏が、バックルを締めるように“カッチリ”受賞(ヨハン・ジャーネスタッド氏、スウェーデン王立科学アカデミー提供)

さまざまな物質を反応させ、切り離したり結合したりして、望みの物質を効率よく作ることが、化学研究の大きなテーマだ。こうした中、シャープレス氏は2000年頃、簡単な構造の化合物を使い、反応が迅速に起こり、不要な副産物をほとんど作らずに済むクリックケミストリーの概念を提唱した。

その後、メルダル氏とシャープレス氏がそれぞれ「銅触媒によるアジド-アルキン付加環化」と呼ばれる反応の有効性を示した。この反応は現在、創薬や生命科学、材料開発などに広く利用されている。ベルトッツィ氏は生体の正常な働きを乱さないように改良。進行がん患者向けの医薬品開発などに利用されている。

「クリック」は、ベルトのバックルがカチッと音を立ててくっつくように、2つの分子が簡単に結合することに由来する。3氏の成果に対しノーベル財団は「化学を機能主義の時代へと導き、人類に最大の利益をもたらしている」と評価した。

賞金計1000万スウェーデン・クローナ(約1億3000万円)は3氏で分け合う。授賞式は12月10日にスウェーデンのストックホルムで、3年ぶりに受賞者を招いて開かれる。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大を受け、居住国で表彰を受けた過去2年の受賞者も招かれる。

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    ノーベル化学賞の受賞が決まった(左から)キャロライン・ベルトッツィ氏、モーテン・メルダル氏、バリー・シャープレス氏のイラスト(ニクラス・エルメヘード氏、ノーベル財団提供)

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