KPMGコンサルティングは10月4日、「日本企業のグローバル経営におけるガバナンス体制の課題と展望~地政学・経済安全保障リスクへの対応」と題した記者勉強会を開催した。オンラインにて開催された勉強会には、同社 サステナビリティトランスフォーメーションサービス パートナーの足立桂輔氏が登壇。グローバル経営管理のトレンドや、日本企業が抱えるグローバル経営管理の課題の変化、今後のグループ経営・ガバナンスの潮流について解説した。
メガトレンドが促す日本企業のガバナンス再考
冒頭足立氏は、グローバル経営管理における4つのメガトレンドとして、地政学・経済安全保障リスク、サステナビリティ、デジタルを挙げた。これらのトレンドは「グレートリセット」と呼ばれ、企業のグローバル経営に大きな変化を与えている。同氏曰く、2~3年前までは「グローバル化の時代」と言われていた世界観が、「ブロック化の時代」へと変化する今、日本企業はグループガバナンスの在り方を再考する必要性に直面しているのだという。
例えば、従来行っていたような「日本から海外の生産拠点をコントロールし、日本人を現地に送り、本社とのブリッジにする」といった管理から、今後は「日本も一つの地域と捉える」「ハイブリッドワークとデータドリブンで管理する」といった具合に、グループガバナンスに対する基本的な思想を変える必要があると見解を示した。
日本企業は地政学リスクにどう向かい合うべきか
グローバル経営を取り巻く地政学・経済安全保障リスクについて、足立氏はロシアのウクライナ侵攻や、米国の人権リスクなどを重視した規制強化、それに対する中国の対抗措置などを紹介。このような状況下で事業をどうしていくのかを判断する経営者は、信念やパーパスをしっかりと持っていることが重要だと言う。ただし、ステークホルダーの声をに耳を傾けたり、丁寧な説明をしたりすることも不可欠だ。
また、「日本企業は不得意である場合が多い」(足立氏)ものの、撤退を含めた出口戦略を用意することや、サプライチェーン全体を見られる司令塔機能を持つことも大切になると説く。
さらに、自社に影響のある地政学リスクに対し、シナリオ分析を持っておくことや、定点観測を行っていくことなども大切だとアドバイスを送った。
グローバル経営管理にもやはり必要なのは「デジタルの力」
新型コロナウイルス感染症の流行は、日本企業にもサプライチェーンの寸断などといった大きな影響を与えた。足立氏はゼロコロナ政策を継続する中国を例に挙げ、自身が中国に駐在した経験も踏まえて、「コロナ禍において『不正のトライアングル』が見えづらくなっているのではないか」と推測する。不正のトライアングルとは、不正を行う「動機」、行うことができる「機会」、不正を「正当化」できる状況の存在を指す。コロナ禍でリモートワークが進む中、同氏は、現地の不正や問題を早期に発見するための仕組みとして、デジタルデモニタリングする、データを活用するといったことが必要になると強調した。