MM総研(MMRI)は9月29日、公立小中学校および教育委員会を対象として定期的に実施している電話アンケートなど複数調査を分析し、教員業務のDX(デジタル・トランスフォーメーション)動向を分析した結果を発表した。これによると、校務支援システムのSaaS化率は4%に留まることが分かった。

校務支援システムに関する質問に回答した1306自治体のうち、導入済みは計70%だった。このうち、 SaaS型の校務支援システムを利用している自治体は4%に過ぎず、オンプレミス型などパッケージのシステムを利用している自治体が66%を占める。

SaaS化の主なメリットは、教員のロケーションフリーな働き方を実現、ワークライフバランスの改善、物理サーバーが不要なためシステム運用の負担軽減、初期費用の低減などがある。民間企業では数多く採用されているが、学校の校務では利用が進んでいないことが明らかとなった。

  • 校務支援システムのSaaS化比率 出典: MM総研

また、教員業務を処理する校務支援ソフトの種類と数に関して、ソフトウェア名の回答があった827自治体では、39種類の異なるソフトを利用していることが分かった。

県単位の共同システムという回答を含む上位8ソフトウェアで利用自治体の91%を占めるが、それ以外の31ソフトを少数の自治体が利用していた。

  • 導入した校務支援システムと利用自治体の分布 出典: MM総研

一方で校務以外の領域では、SaaSの利用が始まっている。文部科学省が発表した「全国の学校における働き方改革事例集(令和4年2月)」で紹介している39自治体を働き方改革先進自治体とし、その他の自治体と比較したところ、先進自治体はその他自治体と比べ、汎用クラウド・サービスであるGoogle Workspace for Education(GWS)の利用率が1.4倍だった。

  • Google Workspace for Educationの利用率 出典: MM総研

SaaSの持つ高いセキュリティを利用するにはSaaSに接続するための教員用PCを確保する必要があると同社は指摘するが、約3割の自治体は教員用PCの予算を計画的に確保していないことも同調査で分かった。教員用PCの配備原資が自治体財源であることが背景だと、同社は推測する。

  • 教員PCリプレース計画が未詳の自治体の比率 出典: MM総研

ベンダー側の対応として、県共同システムを除く現在使用中の校務支援システム上位7社のソフトウェア提供形態を調べたところ、主要な機能をすべてSaaSとして提供するベンダーは1社に留まっている。

  • 主要校務支援システムのSaaS化状況 出典: MM総研

国内では民間を中心に、SaaS/IaaS/PaaSなどパブリック・クラウドの利用拡大が著しく、パブリック・クラウドの年間成長率は20.3%とオンプレミス(プライベート・クラウド)を上回っている。この成長率を牽引しているのがSaaSだと、同社はいう。

  • 国内クラウド市場の規模予測 出典: MM総研

今回発表した分析結果について、同社取締役研究部長の中村成希氏は「校務支援システムメーカーは、現在の規制にとらわれず、将来の教員の働き方に資するクラウド活用モデルを提示すべきだ。教育行政は、教員の働き方改革にクラウド技術を最大限に活かす前提に立てば、教員が活用を開始した汎用SaaS だけでなく従来の校務支援システムもSaaS型で提供しうる環境整備を進めるべきだ」と総括している。