NTTコミュニケーションズ(NTT Com)とオムロンは9月28日、「地球環境」の保全と共存したモノづくりの実現といったSDGs達成に向けた取り組みにおいて共創すると発表した。

具体的には、NTT Comの得意なIT領域の技術と、オムロンが得意とするOT(ファクトリーオートメーション)領域の技術を連携することで、サプライチェーンにおけるデータ共有基盤の構築を加速させる。

製造現場においては、製造工程の脱炭素化が課題のひとつになっているが、全体最適を実現するためには、自社工場のみならずサプライチェーン全体を考慮した脱炭素化に向けた取り組みが求められているという。

「最近では、自分の工場の燃料や電気の使用量だけでなく、サプライヤーの工場の中のCO2や燃料の消費、運んでくる際の環境負荷についても情報を開示してほしいというリクエストがある。また、下流である製品の利用やリサイクル、廃棄についてのデータの開示も求められている。しかし、世界中にサプライヤーが広がっており、どこの工場で生産されたのかもわからない面がある。そのため、世界中のサプライヤーや利用者が共通のデータ形式や接続の方式を使って、データを共有する基盤があるのが理想的だ」(NTTコミュニケーションズ ビジネスソリューション本部 スマートワールドビジネス部スマートファクトリー推進室 担当部長 エバンジェリスト境野哲氏)

  • NTTコミュニケーションズ ビジネスソリューション本部 スマートワールドビジネス部スマートファクトリー推進室 担当部長 エバンジェリスト境野哲氏

そのため欧州ではGaia-Xという欧州データ流通基盤がつくられようとしている。そして、各企業は、「IDSコネクター」というデータ送受信のためのソフトウェアを通してGaia-Xに接続する。これにより、企業は特定のデータを、特定の相手と期限を決めて、データ共有することができるという。

NTT Comとオムロンはこれまで、データ主権を保護しながら国内外の組織間で安全なデータ共有を実現する、日欧連携共同トライアルに2021年度より取り組んできた。

  • Gaia-Xに準拠したデータ交換のイメージ

これまでは「Gaia-X」で使われる「IDSコネクター」を用いた相互接続検証を行ってきたが、今回の共創では、この取り組みを拡大。オムロンの持つモノづくり現場の自動化技術や経験、広いラインナップの制御機器と、NTT ComのICTインフラを連携させた実験環境を両社共同で2022年10月から構築し、OT領域のデータを、データ主権を保護しながらサプライチェーン全体で共有できるソリューションの開発及び提供を進める。

なお、日本版のGaia-Xの構築に向けた話し合いも開始されており、NTT-Comでは、日本のデータ共有基盤と海外のデータ共有基盤を連携させる方式が望ましいと考えているという。

共創の主な取り組み内容は、欧州の各種データ連携基盤との相互接続を可能とするデータ連携プラットフォームの実用化、IT領域とOT領域を安全につなぐ相互接続検証、高い生産性とエネルギー効率を両立したモノづくり現場の実現の3つ。

  • 共創の概要

欧州の各種データ連携基盤との相互接続を可能とするデータ連携プラットフォームの実用化では、NTT Comのデータ利活用プラットフォーム「Smart Data Platform(以下 SDPF)」や、NTT ComとNTTデータが開発するデータ連携プラットフォームを活用することで、「Catena-X」、「SCSN」など欧州の各種データ連携基盤との相互接続を実現。さらに、データ主権を保護した上でCO2排出量などの国際データ連携が可能な本プラットフォームの実用化と、本プラットフォームを活用したソリューションをIT領域で提供するという。

IT領域とOT領域を安全につなぐ相互接続検証では、両社は、製造業各社の製品や生産に関するOT領域のデータを企業間で共有するために、IT領域に位置する本プラットフォームと、OT領域に位置するコントローラーを安全に相互接続する。5Gなどのモバイル系ネットワーク、グローバルネットワーク、エッジコンピューティングサービス「SDPF Edge)」、「withTrust」と、オムロンのコントローラーを接続し、生産工程で把握した原材料の種類やエネルギー消費量、品質などのデータを精緻に収集、分析、活用できる仕組みを共同で検証する。

高い生産性とエネルギー効率を両立したモノづくり現場の実現では、オムロン独自のモノづくり現場革新コンセプト「i-Automation!」を具現化した自動化ソリューションをOT領域で提供することで、高い生産性とエネルギー効率の両立を支援し、生産現場の設備の稼働率や制御方法の最適化により最小化されたカーボンフットプリントを精緻にデータ化し、CO2排出量の削減・可視化を可能にしていくという。また、資源循環に向けた各資源の使用状況や廃棄状況の可視化と再利用促進の実現に向けた共同での技術検証を開始するという。

オムロン インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー 商品事業本部コントローラ事業部 事業部長 生田靖人氏は、「いかに効率よく(製造)ロボットを動かして、無駄なエネルギーを発生させないためには、常にデータを収集し、現場にフィードバックしていく必要がある。今後は、人の動線とロボットの動線がいかに効率よく配置されるかを、動線をデータ化して最適な生産現場を作っていくことにトライしていく。ITレイヤで連携することで、このようなソシューションを提供していけるようになる。これまで生産現場は、品質良く、安く、早くつくることを追求してきたが、これからは地球環境に配慮していくことも課題になる」と述べた。

  • オムロン インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー 商品事業本部コントローラ事業部 事業部長 生田靖人氏