日本IBMはこのほど、メディア向けに同社の戦略と注力エリア、今後の展望についてラウンドテーブルを開催し、米国本社からシニア・バイスプレジデント グローバル・マーケッツ担当のロブ・トーマス氏が出席した。

AIとハイブリッドクラウドがIBMの重点戦略

冒頭、トーマス氏は「IBMは日本に進出して85年になりますが、日本市場、日本のお客さまはIBMの戦略上、非常に重要な存在であり、イノベーションの大きな焦点となっています。量子コンピューティングの市場導入について、いくつかの発表をご覧になった方もいらっしゃるでしょう」と同社による日本へのコミットメントを述べた。

  • 米IBM シニア・バイスプレジデント グローバル・マーケッツ担当のロブ・トーマス氏

    米IBM シニア・バイスプレジデント グローバル・マーケッツ担当のロブ・トーマス氏

続けて、同氏は「現在、IBMの戦略はハイブリッドクラウドとAIに重点を置いています。この2つは、過去10年、おそらく今後10年ほどは最大のトレンドとテクノロジーだと考えており、IBMはこれらの分野に大規模な投資を続けていくつもりです」と話した。

3年前のコメントを掲出するのも憚られるが、「IBM Think 2019」においてトーマス氏はAIに関して以下のように発言している。

「AIは魔法のようなものだと考えられがちですが、それは違います。AIは新しい電力のようなものです。世界に大きなインパクトを与えており、PwCでは2030年までにGDPにAIが影響を及ぼす総額が16兆ドルに達すると予測しています。テック業界でこれほどまでの効果を発揮するものはAI以外には過去存在しません」(トーマス氏)

「AIは企業における新しい収入源の確保や事業モデルの転換、コスト低減だけではなく、3つの重要なポイントがあり、それは“予測”し“自動化”した上で“最適化”することです」(同)

では、なぜIBMではAIとハイブリッドクラウドに注力するのだろうか。

この点について、トーマス氏は現状における企業の状況をふまえ、多くの組織がデータを持ち、定期的にデータを収集しているものの、組織が収集するデータの90%は使われていないか、または十分に活用されていないと指摘。

そのため、データの価値を引き出すにはAIが重要となり、現在の大きなトレンドの1つになっているという。

また、世界中の国・市場でサイバーセキュリティが劇的に増え続けており、これらは手動、または人間だけで解決することは不可能であることから、AIの力が必要になり、自動化していくことが望ましいとの認識だ。

  • 90%の企業が収集したデータを活用できていないという

    90%の企業が収集したデータを活用できていないという