大阪公立大学(大阪公大)は9月22日、高分子(ポリマー)と水溶媒にイオンを加えることで温度応答性を発現させることに成功し、また加えるイオンの種類によって反応温度を制御できることを発見したと発表した。

同成果は、大阪公大大学院 工学研究科 物質化学生命系専攻の原田敦史教授、同・北山雄己哉特別助教、同・江本隼也大学院生(大阪府立大学大学院生)らの研究チームによるもの。詳細は、米国化学会が刊行する高分子に関する全般を扱う学術誌「Macromolecules」に掲載された。

「温度応答性高分子」は、温度変化で高分子の物理的特性を変化させられる機能性高分子であり、ドラッグデリバリーシステム用のキャリア(運搬体)や細胞培養用基材などでの応用が進む。温度応答性高分子には、「下限臨界溶液温度(LCST)型」と「上限臨界溶液温度(UCST)型」の2種類がある。LCST型は特定の温度以上で不溶化し、UCST型は特定の温度以上で溶解するという特徴をそれぞれ持つ。

これらの温度応答性は、高分子と溶媒の親和性が重要な因子となるとされる。つまり、LCST型では、温度上昇に伴い高分子と溶媒の相互作用が低下するため、高分子同士の相互作用が優勢となり溶媒から析出する。逆に、UCST型では、温度上昇に伴い高分子間相互作用が低下し、高分子と溶媒の相互作用が優勢となり溶解する。このように温度応答性高分子の多くは、高分子と溶媒間の親和性が重要な因子となっている。

そこで研究チームは今回、高分子と溶媒に加えて、第三成分として特定のイオンが存在している中で、温度応答性を発現する新規高分子を開発することにしたという。具体的には、高分子「ポリアリルアミン」(PAA)に「無水フタル酸」などの「カルボン酸無水物」を結合させた水溶性高分子である「カルボキシ化PAA」が合成された。